第32話 リリアーナの場合

「拘束してあるか?」



ジョンさんことジェラルド国王は孤児院では見せたことのない王の顔をしている。




「はい…ですが王妃様が…」




地下牢の入口からヒステリックな怒鳴り声がしている。そこには入口にいる兵士に詰め寄る王妃の姿があった。




「退きなさい!わたくしは王妃よ!王女を拘束するなど許されると思っているの!」



入口の兵士は沈黙して聞いていない。この兵士達の賃金を上げようと心に誓うジェラルドだった。



「王妃、何をしている」王妃を冷たい目で見るジェラルド



「あぁ…陛下!どうかリリアーナをお助け下さいませ!」



「リリアーナは約束を破りあの子の元へ行き侮辱した。更にエチカの息子をも侮辱したんだ」



「エチカの息子があそこにいるのですか」



王妃はいつもの人を馬鹿にするときの顔になる。それを見たジェラルドは虫酸が走る。



「そんなにあの場所が気に入らないか?そうだよな、あそこの子供達は親に愛されているからな」



「なっ!リリアーナを愛していないんですか!」



「あの子は私の子ではないからな」



「何を…陛下の子ですわ!」



「調べはついている、本当の父親はマーデン・ウィナリー侯爵。お前の愛人だろう?」



王妃に証拠の書類やマーデンの自白文を突き付ける。王妃は顔面蒼白になり震えだし平伏す。



「お許しください!わたくしは悪くないのです!マーデンがわたくしを襲ったのです!」



本当にどうしようもない女だ。ジェラルドは近くにいた兵士に王妃を拘束するように言う。



「わたくしを拘束したら父上が黙っていませんわ!父上は筆頭公爵で国の重鎮ですわ!」



「その父上も人身売買に横領、そして殺人に傷害、脅迫いろいろありすぎる罪状で拘束している。コードブル公爵家はもうない。」



「そんな…わたくしは知らない!父上がやった事です!わたくしは悪くない!」



兵士に引きずられながらもヒステリックに叫んでいる王妃。それを無視して一番奥にある牢屋に向かう。そこには下を向いて黙っているリリアーナがいた。



「母上の声がしました……捕まったのですか?」



虚ろな目をしてジェラルドを見るリリアーナ。もう全てを諦めているように投げやりに聞いてくる。



「あぁ」



「そうですか……わたくしはどうなるんですか?この城から追い出されるんですよね」



「何故そう思う?」



「わたくしは父上…ジェラルド陛下の子ではないからです…」



リリアーナは目に涙を溜めて話し出す。



「わたくしは陛下の子ではないと知っていましたが…愛されたかった…皆、母上もお祖父様も愛してはくれなかった…わたくしもあそこに行けば愛されますか?」



リリアーナの思いを聞き心が痛むジェラルド。この子はまだルルと同じ歳で牢屋に入っている。ジェラルドと王妃がこの子を追い詰めたんだろう。



ジェラルドは持っていた鍵で開けるとリリアーナを抱きしめる。すると幼い子供の様に泣きじゃくるリリアーナを泣き止むまでずっと抱きしめていた。




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