第5話
あれから数カ月の時が流れ……あの女の行方はわからない。
兵士や配下を使い調べさせているけれど、何も手掛かりは掴めていない。
それらしい情報は何も得られなかった。
捜査は続行させているけれど……おそらく見つけるのは難しいだろう。
普通に考えれば死の森で力尽き息絶えた……そう思えばいい。
でも私の中で何かが訴えている。
このまま奴を放置すると何か恐ろしいことが起きるのではないか、と。
杞憂であれば良い……でももしかして、ということもある。
なので放置は出来ない。
と言っても……今のところ捜索を続けること以外にできることがない。
しかも死の森の中は危険すぎて捜索ができない。
最初に百人からなる兵士の軍隊を送り込んだが……全滅して誰一人帰ってこなかった。
「はぁ……」
あの女のことを考えると自然とため息が零れてしまう。
本当に厄介な……。
それ以外のほぼ全ては、まさに順調そのもの。
国はほぼ掌握した。
今は隣国に攻め入るために裏で色々画策している。
そして、あの騎士の男。
あの後、城に常備している霊薬で回復させた。
霊薬はなかなか手に入らない代物だけど、裏切っていたとはいえあれほどのイイ男だ。死なせるには惜しすぎた。
回復させた後、遺失物を外した状態でもう一度魅了した。
今回は完全に魅了されている。
私を裏切ってまであの女のために行動していた男が今では私のために生きている……これほど気分が良いことはない。
私の周りの側近や近衛は全てイイ男で揃えた。
それら全てが私命なのだ。
これだけの男たちにチヤホヤされるのはとても良い。
やはり私の様な存在にはこれが当たり前で、前世がおかしかったのは間違いなかった。
ただひとつ……あの女の子と以外にも男の事で困ったことがあった。
それは私の中に、まだ僅かながら存在しているこの身体の前の持ち主の魂だ。
こいつのせいで、これだけの男に囲まれながら未だに誰とも肉体関係に至れていない。
勿論割と早い段階でしようと思った。
前世でも経験がなかったし、前から興味は勿論あった。
ないわけがない。
それに今は周りの捨てるほどのイイ男がいるのだから、誰だってしようとするはずだ。
私だってしようとしたのだけど……その時困ったことが起きた。
男の前で服を脱ごうとすれば身体が動かせなくなるし、ならば男にやらせようとしたのだけど、そういう行為のために私に触れるとその部分が火傷したように爛れたり、精神系の魔法をかけられたかのように男が錯乱したりするのだった。
だから、まだ私はそういった行為が出来ていなかった。
未だに私の中にいるもう一人の私が心底忌々しい。
さっさと消えなさい。
お前はもう過去の物……今を生きる私の邪魔をするな。
一応日に日にその存在が弱くなっているのは感じている。
まぁ、いい。
このままいけばそのうちに消えることは間違いない。
消えてしまえばこっちのものだ。
いつか来るその日を思って、私はほくそ笑んだ。
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