第2話

 何が腹立つって……語ればキリがない。


 キリがないけど、その中でも特にムカつくこと。


 まずは私に匹敵するほどの見た目。

 そして公爵令嬢という地位。

 誰にでも優しい性格、聖女と呼ばれていた私と遜色ない。

 しかも全属性の魔法の才能が有って文武両道。

 幼いころから神童と呼ばれていた。

 なんだ、あのチート主人公は。


 しかも!

 次期騎士団長で将来は軍務のトップに立つだろうと言われている騎士団の若手ホープのイケメン婚約者までいる。

 親同士が決めた婚約といえどもお互い思い合っていて仲むつまじいらしい。


 絶対に許せない。

 今はまだチャンスがなく近づくことも出来ていないが、そのうち私の魅了で引き裂いてやろうと思ってる。

 陥れて不幸にしてやるのは私の中で絶対の決定事項だった。


 学園での人気も私と二分している。

 それも私をイラつかせる。

 チヤホヤされるのは私だけでいいのに。

 なんせ私は『転生者』という特別な存在なのだから。


 私がこの世界の主人公なのは決定的に明らかなんだから。


 それに、直感で感じたことがある。

 この女は私がこの国を牛耳るのに邪魔になる……確実に。

 だからどんな手を使ってもアイツをどん底に突き落としてやる。



○ ○ ○


 まずは当初の予定通り少しずづ魅了の力で使える駒を増やしていく。

 身の回りにおく者は従順なイケメンだけでいい。

 女……とくに見た目の良い女は苛酷に使い潰す。


 あの女の婚約者を私の虜にする。

 アイツの家族もだ。

 私の魅了は女にもある程度は効果がある。

 それで実家を追放でもして平民に落としてしまおう。

 そうしてしまえば、いくら神童と呼ばれるあの女でも私に何も出来やしなくなるはず。


 婚約者と家族に裏切られ絶望するあの女の顔を想像すると笑いがとまらない。


 あっ、そうだ。

 良いことを思いついた。

 

 あの女を婚約者の手で殺させるのはどうだろう?

 私の人生設計の障害になるだろうという直感。それに従うならあの女が生きていることは私にとって良くないはずだ。

 なら最高で最低な方法で絶望の中で殺してあげる。

 平民に落とされて生きながらえるよりずっと幸せに違いない。


「フフッ」


 自室の豪華なベッドの上で考えながらほくそ笑む。

 今から楽しみで仕方ない。


「アハハッ! この世界にイイ女は私だけで十分よ」


 私はこの世界で誰よりも幸せになってやるんだから。


 そうと決まれば計画をしっかりたてないと。

 失敗は許されないのだから。


 

 


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