第4話 クビになった。
「悪いなシズカ。お前はクビだ」
へ?
「ごめんねー。お金も入った事だしもっと強いポーター雇うことにしたのよ」
パーティー、炎の竜の拠点に呼ばれたあたし。
次のお仕事の説明かな? いつもならこんな部屋の中までは通されないのにな、とおもいつつ言われるままやってきたあたし。
目の前にはリーダーのドワンさんが大きなソファーに腰掛けこちらを見てる。まあイケメン? な青年。
左右に立つのは白魔道士のマリアと魔術師のエレナ。黒と白の魔道服が派手だ。
そして背後には巨体のデメトリウス。ドーンと立ってるとそれだけで威圧感がある。
に、しても。はうう。クビ、かぁ。
「まあ次に雇うのはやはり俺くらいガタイのいい奴が良いだろうな。その分魔石も素材も多く運べる」
はう。デメトリウス。あんたみたいにデカかったらポーターなんかやってないでちゃんと重戦士してるでしょうが。
「やっぱり少しは魔法がつかえるほうがいいわよねえ。アタクシみたいに」
はうあうエレナ。エレナみたいに魔法が使えたら立派な戦力でしょう? なに好き好んでポーターなんかしてるもんか。あたしじゃあるまいし。
「そういうわけだから。俺たちも色々考えた結果だ。もうギルドには次のポーターの斡旋を頼んである」
はう。ドワンさん……。そっかもしかして。
「ごめんねえ。あたしたちも次はもうちょっと危険を避けたいのよ」
はうマリア。でも、でもさ?
「それならポーターじゃなくてメンバーを増やせばいいんじゃないんです?」
と、思わず口に出た。
「「それじゃ取り分が減るだろーが」「でしょー」」
はうあう。そうなのね。
じゃぁしょうがないか。この炎の竜は中堅どころのパーティーで、あたしでも重宝してもらって感謝はしてるんだけど。
「わかりました。今までありがとうございました」
あたしはそうお辞儀をすると踵を返して部屋を出た。
そっか、クビかぁ。
ギルドに次のお仕事斡旋してもらわなきゃぁ。
ほんと、しょうがないなぁ。
あたしはちょっとだけうなだれて。てこてことギルドまで歩いた。このまま無職でいるわけにはいかないし。
自分で稼ぐって手がないわけでもない。洞窟とかそういう場所で偶然魔石を拾ったりする事だってないわけじゃないしね?
でも、ずっとポーターをしてたあたしが魔石を手に入れて換金しに行ったとするでしょう? そうすると周りの目はどうなるか。
あいつ、ポーターのくせに戦利品をがめてたに違いない!
こっそり隠して持って帰ってたに違いない!
そんな信用の置けないポーターなんか雇えるか!
そう思われるのが関の山。
ポーターが戦利品をがめる。これは一番やっちゃいけない事だから。
たとえあたしがそんな事していないって言ったって、信じてもらえっこない。
だって、あたしは自力で魔獣を倒せない事になってるんだもの。
だからねえ。
自分で冒険者するつもりがないのならそういう手段はなるべく取りたくないの。
戦いにまみれた生活をするなら、こうして家出をする必要なんかなかったんだもの。
でも。
人族の街も、色々世知辛い。
市民権の無い子供なんか雇ってくれるところなんてないもの。
ほんとは雑貨屋さんで店員でもしながら暮らしたかったんだけどな。
身寄りのない子供の就職先なんて、命の危険のある冒険者家業くらいしかないんだもの。ふにゃぁな話だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます