第10話
「ま、こうなった以上覆せないだろ。君たちのグループは-50ポイントだ。もう50ポイント減らされたら退学だから気を付けな」
「え?」
樫谷、藍水二人が戸惑った声を上げる。
「書いてあっただろ?一定のポイントが貯まれば上のグループへ昇格だ。逆に-100ポイントを超えると即退学、覚えときな」
先生の言う通り、最初のページに記載されていた。上の意見が尊重され、悪質であることが立証されればペナルティとしてポイントがマイナスされる仕組みだ。
Dランクへ上がるためには1500ポイント必要だったはずである。
0から始まるEランクはその分不利だったりする。一つ一つの行動が命取り。
聞いた途端に二人が言葉を捲し立てる。
「アタシ昨日のこと聞いて少しはすごいと思ってたのに...」
「だから言ったんだよ、オレは。金でも払って去ればいいって」
結果論から言いたいことを言ってくれる。
「...すまん。こんな結果にならないように尽力したつもりだった」
「努力したって結果がこうなら意味ねーよ。本当ふざけんな!」
「...すまん」
謝ることしかできない。絡まれた時点からどの選択をしても損することは決まっていたのだ。
俺の中では、一応こいつらを守ることは出来たと思っていたがこの有様。そりゃそうだ。件を知ってるのは俺と桑原たちの5人。どう、まろび出ようが相手の意見が通る。
助けたところで、結果が悪ければ人のせいにする。自分は何もしていないからと毒づくが、何も行動しなかった人間が言うことではない。
「じゃあ、僕はもどるぞ~」
猫背で戻っていく先生の無関心な態度を押し出す後ろ姿が、想像以上に腹が立つ。担任なら庇護してくれるものでは無いのか。
反抗したところで目に見えてはいる。
「拓真君、どうするの?」
藍水の語調には僅かに怒気を孕んでいる。
「兎に角、テストの点数でポイントを稼いで0に戻すしかない」
「マイナスになった分は、テストでも何でもお前が全部戻せよ。オレは何もしないけどな」
「いや、樫谷も点数取ってくれないとまたマイナスになるぞ!」
「晃君、上に上がりたくないの?」
「知らねえよそんなこと。現在マイナスの時点でやる気なんてでねーよ。拓真がどうにかしてくれるんだろ?」
「...わかったよ」
1学期中間テストは1ヶ月後に行われる。
一位を取った場合1000ポイントとして追加される。10位までは50ポイントずつ減っていき、生徒人数の半分200位まではポイントがプラスされる。
すなわち対称的に201位からはマイナスされ、最下位の400位は1000ポイントのマイナスということになる。
さらに、赤点を取ってしまうと1教科毎にマイナス500。
俺が一位を取れば、マイナスポイントを抜け、Dランク昇格までかなり優位に立てる。
しかし樫谷がテストを捨てるとするならば、一発で退学になる可能性も高い。
さらに問題は藤桜と藍水の成績が全くわからない。どちらとも悪ければ、希望を絶たれる。
試行錯誤していると一時間目を知らせるチャイムがなってしまった。
まずは他の手立てを見つけるしかない。
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