第24話

٭❀*


わ、私は何を口走ってしまったのだろう。


美空ちゃんに上手くいくと言われた時は正直嬉しかった。

だが、それ以上に叶わないとわかっている恋に嫌気がさした。夢と同様にだ。

小さい頃から今も変わらぬ初恋の相手、春翔くん。

もうすぐ死ぬという私に夢を追いかけようと言ってくれた突拍子もなくて、不器用で

大好きな人だ。


だからこそ私は春翔くんに“2個目の夢”を持ちかけることが出来た。

こういうのは普通好きにならないでが定番みたいだけれど。

私は、私が最後のその時まで、夢を追いかけ続けていたいから。

そして穏やかに最後を迎えたい。

だから、だからこそ。

私の大好きなサクラソウ。

自分の名前にも含まれていて私にとって特別な意味がある花。

この病院に来てからずっと飾ってもらっているサクラソウを差し出しながら言うことが出来た。

私は2つ目の夢を叶えたい。

“春翔くんと付き合いたい”


𖤣𖥧𖥣。𖤣𖥧𖥣。


え……理解が追いつかない。

君はもうすぐ……

夢を追いかけて欲しいといったのは俺だけれど……

けど。

何よりも嬉しい。

彼女からずっと待ち望んでいた告白。

しようと思って機会を延ばし延ばしにしてしまった告白。

事実を知ってもう二度と無理だと思っていたこと。

そうか、恥ずかしいけれど

“俺と付き合うこと”

“美妃奈と付き合うこと”

2人の共通の夢が、2つもあったんだ

あれだけ言っといて

叶えない訳には行かないよな。


「やっぱり美妃奈は夢を追い続けてくれないと。」

そう言って僕は、飾ってあった花瓶からもう1本、サクラソウを抜いて美妃奈に差し出す。

「美妃奈なら、わかるよね?」

「……っく、はるくんサクラソウの花言葉もしってたの……っ」

「初恋、でしょ?本当に美妃奈は夢を追い続けてたほうがかわいいよ。もちろん、喜んでお付き合いさせて」

それを合図に美妃奈は僕の胸の中でひたすら泣いた。

今まで会えなかった時間を埋めるように。

分かち合えなかった不安を分かち合うように。

しばらくして美妃奈は泣き止んだけれど僅かに頬に流れた涙を指でそっと拭ったら、顔を赤く染めて怒られてしまった。

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