第10話
𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧𖤣
「で、どーだったの。結果は」
もちろん想像できているけど、一応聞いておく。
「あの、その、美空ちゃんとお付き合いさせていただけることになりました……」
「おお!!おめでとう!」
「あ、ありがとう、、?」
「じゃあ、今日打ち上げしようよ!僕と美妃奈と久留野さんと海翔で」
「いいのか?もちろんやりたいがどこでやる?」
「んー、僕たちの家でもいーよ?」
「ちょ、お前もしかして同棲してんの!?」
「?なんでそういう解釈に」
「いや、お前ら仲良さそーだったからさ付き合ってんのかと思ってたけど。僕たちの家て……」
「あぁ。美妃奈とは幼なじみ、だから、ね。親の都合で引っ越してきて今は俺の家に住んでるんだ。」
幼なじみだから。これは最高の逃げ言葉だ。これ以上に発展することもないということを明確に表すことが出来る。
「じゃ、じゃあお邪魔しよーかな」
「りょーかいっ!出来たら今日がいいかな。早いうちにお祝いしたいし。久留野さんに聞いてみてよ。」
「もちろん。昼になったら聞いてみるよ」
「じゃ、今日の15時に僕の家ね。」
「「「了解!」」」
「各自おやつとか飲み物とかいるなら持ってきてー」
「「はーい」」
そう言って別れた。
とりあえず1時間の間に部屋を片付けなくては……急いで帰ってー
「はあっ、はあっ、まってよー、はるるん。そこまで急がなくても。」
「ごめん、けど部屋の片付けあるでしょ?親友に彼女が出来たんだからしっかりお祝いしてあげないと。」
「むー、はるるんの意地悪。けど、美空ちゃんのあの焦れったい恋が進展したんだから応援してあげないとねっ!」
「だね」
「ピンポーン」
「はーい」
出てみるとそこにはビックリ。
いつもの三つ編みお下げを解いて、くるふわな茶髪に淡いピンクの花柄ワンピースを纏い、髪にはリボンまでつけてすっかり別人のように可愛くなっている久留野さんがいた。
一方海翔の方はいつもと変わらないといえば飾らないシンプルな白い半袖に、黒いスキニーを合わせていて嫌という程体型が際立って似合っていた。
「え、なんでそんなお洒落して?」
「わ、私たちこれでも初めて……デートなので。」
「だな。好きな子の前くらいかっこよくいたいから」
「も、もうっ!海翔くん……」
「そ、そーか。良く考えれば初デートだったよな……最高の思い出にしてくれよ!」
「あぁ!もちろん。ところでお前たちはなんで制服?」
「いや、着替えるのがモニョモニョ」
「なるほどな笑」
「あ、あとこれ南くんと美妃奈ちゃんに差し入れです!お二人の関係はもう海翔くんに聞いてるのでご安心くださいね。」
「うわーっ!すごいよすごい!クッキーとかポテチとかグミとかアイスとか色々ある!」
「まじか!それは凄いな、食べよ食べよ」
「お前らほんとに目的忘れてないか?」
「「あ」」
「いいんですよぉー、そんなの。私はお気持ちだけで嬉しいので。」
「けどね、うーん、よし。このゲームで買った人からお菓子選んで乾杯しよう!」
そう言って僕が取りだしたのは某カートレースゲームだ。
「おお!いいじゃんー」
「楽しみ……ですね」
「うんうん!私もやりたーい」
「じゃ、とりあえずチーム分けして買ったチームがお菓子1個ずつ貰えるってことで。」
「グーチーグーチーアッタンチ」
美妃奈と僕はグー
久留野と海翔はチーだった。
「お前ら気ぃあいすぎ。出すタイミングも一緒とか笑うからやめて笑」
「えへへ……そう?かな」
「よ、よせよ。」
恥じらいすぎて使い物にならなくなってきたのでとりあえず先にやらせる。
3.2.1GO
の音と共に車が走り出す。
ん!?久留野…さん。圧倒1位じゃ…
「恥ずかしすぎて忘れてたけど美空はマ○オカート全世界3位らしい……」
それ、周回遅れのハンデ付きでも勝てないやつじゃん……
「じゃ♪私ハーゲンダッツ貰いますね!」
初めにお気持ちだけでいいですと言っていた人と同一人物とは思えない。
まぁ、久留野さんが買ってきて全員惨敗したのだから誰一人異論はないけれど。
美妃奈が久留野さんとなにやら目配せをしたあと、お菓子をとっていった。
「じゃあ、私はぶどうグミもらおっかな!」
2位が美妃奈だ。
え?男子勢弱くないかって?
お願いだから指摘しないで……
「じゃ、俺はポテチで最下位のお前がクッキーな。」
「「じーっ」」
何やら女子二人から湿った視線を感じる。
主に久留野さんからは気の所為かもしれないが燃え上がるほどの怒気が感じられる。
「ど、どうしたんだ?美空ちゃん。」
そう感じたのは、海翔も同じようで。
若干額に汗をかいている。
「どうしてって?分からないんだ。へぇー。美妃奈ちゃんは1発で分かってくれたのに。男子ってそんなもんだよね。ほんと嫌んなっちゃう。」
海翔の目が泳ぎまくって、助けを求めるようにこちらで留まる。
(ごめん、ごめん。海翔。僕には無理だ……)
助言が得られないとわかると落胆して、久留野さんのいつもと違うところを焦りながら探し始める。
「はるるんも同類だよ?なんで分からないのかなぁ。」
「そうですよね。いや、わかってて渚くんに答えさせようとしているのかも知れません。春翔くんは気が聞きますねぇ。」
こ、こわいぃぃ。。
海翔はもはや固まってしまっている。
僕は……言わずもがなである。
普通に考えると、久留野さんと美妃奈が怒り始めたのはおやつの争奪戦が始まってからだ。
けど、上位の2人は食べたいものを選んでいるはずだしお菓子の選択や、ましてや決め方には問題など……
その時、ふとクッキーが目に映る。
若干ムラがある焼き色。
少し形が崩れたラッピングのリボン結び。
これらが表すことはーっ!!!!
こ、これはまずい……
「お、おい海翔。僕やっぱりポテチが食いたいな。お願い!後生だからポテチを食べさせて!!」
「はるるんなら分かるって信じてたよ!」
「南くんは気づいてくれましたか。それに比べて……はぁ。」
「え、えと今日も可愛いな!美空ちゃん!」
あぁ。海翔が追い詰められすぎて褒めに徹した……
「へぇ。それは主に何が可愛いのでしょうか。明確に言わないと伝わりませんよね。まぁ、言わなくても伝わって欲しいことくらい誰にでもありますけど。」
ジロっ……久留野さんに睨まれた僕と海翔は情けなくもすくみ上がった。
まぁ、たしかに“あれ”には気付かないとかわいそすぎるけれど。
その瞬間
「あっ!!!!」
海翔が急に大声を上げた。
その瞬間、真っ白になった顔からさらに血の気が引いていく。
どうやら気づいたのだろう。
「はぁ、今更ですか。」
「もー!遅いよ海翔くん。失格!!」
「ほ、ほほほほほんとにすみません。美空ちゃん、いや、美空様!!」
「で、?何に気づいたの?」
「俺……僕に君の手作りクッキーを食べさせてください!」
「はぁ、遅いわよ。もう……っ」
「そーだよ!海翔くん。それはもう昨日誘われてからすぐ、美空ちゃん作ってたんだから!」
「そ、それは言わない約束……でしょ?美妃奈ちゃん」
「あははー……ごめん。けどさ、美空ちゃんがあれだけ頑張ってたのに気づいて貰えないなんて可哀想だよ!」
「ごめ、ごめん。美空ちゃん。全然気づかなくて……」
「もう……いいよ。これからは、誰よりも先に気づいてね?」
気づいたらあの不穏な空気はどこえやら。
クッキーのような甘い空気に包まれていたんだ。
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