ウリエルさんのお薬
佐藤子冬
第1話 天使が降りて来た。うん? 何かイメージと違う!
神よ、助けてくれ。
僕の人生は散々だった。だったと言うのもおかしい。今も散々なのだ。貧しい家庭に生まれ、不条理を味わい、神を研究し、真理を探究し続けた。
結果、愛と言う代物は清貧を好むことも判ってきた。どうにも自分の貧しい身なりこそ神が御所望した人の生とやらに近いらしいのだ。
だけど、そんなの真っ平御免だ。僕は人生を楽しみたい。我が儘で身勝手で独善的でも。それが人間ってものだろう。
祈り、祈り、祈り続けた。神よ、助けてくれ。僕に救いの御使いを遣わしてくれ。働き続けるなんて嫌だ。
お金持ちになって人生楽したい。
祈りが届いたのか。ある日、天が裂けた様に一つの灯火が降臨した。その光が人の姿になった時。
僕は唖然とした。
幼女。
そうとしか言いようがない。しかも不思議の国のアリスの様な衣装を身に纏った幼女。
幼女はもじもじしながらこちらを見詰めている。
「えぇっとね」
幼女は精一杯の声音で振り絞るもそれ以上続かない。取り敢えず待ってあげることにした。
五分経過。幼女は涙目になりながら声を出そうとしている。段々心配になってくる。
この子は本当に御使いなのか? 確かに御使いは純粋性から子供の姿に喩えられることはよくあったらしいが。だけど、目の前にいる幼女は頼りなさそうに見える。普段の自分も大分頼りない信徒として看られているが、この子は華奢だ。ロリータみたい。
いや、それも的を外している。確かに魅力的な身体つきはしているが、純朴な様子が覗えた。不安になってこちらから声をかけてみる。
「大丈夫?」
「うん」
良かった。大丈夫ではあるらしい。全然大丈夫そうじゃないけど。
「お嬢さんは何処から来たの?」
こんな純粋そうな幼女であるが、油断をしては駄目だ。聖書に書いてある。
『だが、驚くには当たりません。サタンでさえ光の天使を装うのです。だから、サタンに仕える者たちが、義に仕える者を装うことなど、大したことではありません』
どんな可愛らしい姿をしていても幼女が地獄から来たなどと言われた日にはきっちり地獄へお帰り願おう。
「神様……」
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