第18話 兄上
レオルド・フォン・ハーンブルク
ハーンブルク家と旧サラージア王国の間で行われた戦争の勝敗によって、その知名度は一気に上がった。
その後行われたトリアス教国との一戦も、ハーンブルク海軍による圧倒的な強さを世界に見せつけた。
また、兄さんの凄いところは戦争の面だけではない。兄さんは、天性のセンスと、抜群の先見性、圧倒的な想像力を兼ね備えた人物であり、政治面や経済面でも大きな結果を残している。
「久しぶりだな、ユリウスっ!」
「久しぶり、兄さん。」
兄さんは、僕を軽くハグしながら出迎えた。僕がどれだけ大切にされているかわかる。
続いて、視線を僕の隣に移した兄さんは、確かめるように尋ねた。
「あぁ久しぶりだな。それでそっちのが、噂のカノン・アンレーンか?」
「うん、彼女で合っているよ、兄さん。彼女には色々な所で助けられているんだ。」
兄さんは、あえて偽名を使ってカレンを呼んでいた。この事から、既に兄さんがカレンの情報を掴んでいた事がわかる。
「初めまして、レオルド様。ユリウス様に仕えております、カノン・アンレーンです。」
「あぁ噂には聞いている。これからも、ユリウスに力を貸してやって欲しい。」
「承知しました。」
「じゃあ2人ともそこに座ってくれ。」
「わかった。」
「わかりました。」
兄さんに言われ、僕とカレンは用意された椅子へと座った。
「紅茶とお菓子です。砂糖やミルクはお好みでお願いします。」
「「ありがとうございます。」」
兄さんの右後ろに控えていたクレアさんが僕とカレンの前にトレーを置いた。遅れて、クレアさんは兄さんの前にも同じものを置く。
それぞれの好みで砂糖を入れて一息入れると、早速今日ここに来た目的について話し始めた。
「シュヴェリーンをゆっくり散策していたみたいだから、てっきり観光に来たのかと思ったけど、確か、選挙について聞きに来たんだったよな。」
「はい、兄さんが提案した選挙制度、凄く画期的で、新しい制度だと考えているけど、それをするにはまだいくつか問題がある。まず当たり前に必要なのは、共和国民への告知と立候補者の確保だよね。他にも、汚職対策や独裁対策なんかもしなきゃだよね。」
僕は、咄嗟に思い浮かんだ4つの問題点について尋ねた。考えれば考えるほど、疑問点やどうするのか気になる点が出てくる。
要するに、選挙に関する法律を作らなきゃという話だ。
そして、何故法律を作る時にわざわざ兄さんのところを訪れる必要があったかというと、法律の穴を潰すためだ。
法律の穴というのは、法律を作った本人には見つけにくい。そこで第3者かつ信用できる人に見てもらおうと思ったのだ。もちろんそれだけでは無い。
今回ここにやって来た本当の目的は、兄さんの行動を邪魔しないようにするためだ。カレンには伝えていないが、ハーンブルク家ー兄さんやお母様が、僕を連邦共和国へと送り込んだ理由は、ジア連邦共和国を選挙制度によって裏から支配しようと考えたからだ。
僕が自分で考えて、法律を作ってもある程度まともな法律ができると考えているが、その結果ハーンブルク家が介入する余地が無くなってしまったら意味がない。
また、選挙制度そのものを変えられないようにするための工夫も必要だ。
独裁政治なんかが誕生してしまったら最悪だ、最悪ハーンブルク領本土も巻き込んだ壮大な内戦に突入してしまう可能性もある。そのため、ここで予めそのような可能性を潰しておく事必要があるのだ。
「まぁ確かに、その辺は問題になるだろうな。とりあえず、これが今の所の第1案だ。ハーンブルク領で実施するならこうするだろうな〜ってのを書いておいた。」
兄さんが合図を出すと、兄さんの背後に控えていたクレアさんは僕に書類の束を手渡した。結構厚く、兄さんが事前に用意してくれていた事がわかる。
僕は、最初の2、3枚に目を通す。
久しぶりに兄さんの文字を見たが、相変わらず美しい文字であった。
「流石兄さんだ・・・・・・僕じゃこんな事思い付かないよ・・・・・・」
素直に称賛するしかない。
兄さんが選挙の知名度と重要性を共和国民に広告する武器として選んだのは・・・・・・
「初期費用はこっちが負担する、ジア連邦共和国にプロサッカーチームを設立しよう。」
相変わらずのサッカー好きである、兄さんらしいセリフであった。
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どうでもいい話
最近、W杯が面白すぎて全然時間が取れない佐々木サイです。
メインの方は明日更新します。
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