1回目05

「えへへへっ、サーヤはブータンの事大大大好きだよぉ」




 守れなかった。さらば俺の金、畜生俺の金、くそったれ俺の金。はかない時間だった。




 耐えた、俺は耐えたんだ。今までにないぐらいに。サーヤの嫌いになるよ発言も耐え、今日は豪遊できると思ってたんだ。




 なのにあの顔は反則だ。なんだあの涙目の上目遣いは。その表情で『サーヤにちょーだい。ブータンおねがぃ』はないだろぉ。あげてしまうぞ今畜生。グッバイ俺の銀貨10枚、あっちに行っても元気でな。




 俺は断腸の思いで銀貨10枚をサヤに渡す。




「ブータンありがとぉー。サーヤ、ブータンの事、大大だぁーいすき」




 サヤはにぱぁと笑って、俺の腹に顔を埋めぐりぐりする。




 それだけでなにかいけそうな気がした。それがサヤの戦略だと分かっていてもなんか憎めないし、なんだかんだで渡してしまう。馬鹿だな俺はと思いながら。




 それから俺とサヤは川辺に来ていた。




 サヤは鼻歌を歌いながら上機嫌だ、




 俺から大金もらったからな。俺は引きずらない男だ。ふっ、もう忘れたさ。結局は豚に真珠だったのさ。うっまいこというねぇ~ってか、大きなお世話だ。




 つめたっ。俺の顔に水がかけられた。犯人は分かっている。




「ブータン、サーヤと水遊びしよ~、いくよぉー、それっそれっ」




 川の水深は低く綺麗で、中央付近に行かなければ子供でも入れる。




 サヤは小なさ手で水をすくい、キャッキャッと笑いながら俺に水をかける。




 ふっふっふっ俺の必殺技を見せる時がきた。




 きゅぴん。さっきの恨みだ。




「必殺ビックウェ~ブ」




 俺はそこまで手を入れ限界の早さで水をすくい上げサヤにかける。




 子供相手に大人げないって、ふっふっふっ勝負事は常に一生懸命なだけさ。




 ざぶんと、前進に水を浴びたサヤびしょびしょ、・ぉぉ~~~。




 なっなんて神々しいんだ。透けたワンピースから、する意味なんてないと思われる無地のブラジャーに、カボチャパンツ。




 今俺の表情は過去一きもい顔だと思われる。




 生きてて良かった。




 サヤは自分の格好を見て顔を赤くしてぶるぶる震え、待てそれは石だ。反則だ。




「ぶーだんのエッチ、バカァ~~」




 サヤの投げた石は俺の顔に当たり俺は意識を失った。自業自得か。良いもの見れたし、まぁ  いいか。












 夕暮れ時に俺は目を覚ました。どうやらサヤは帰ったようだった。




 んっ頭に何か張ってある。




 俺は頭に張った紙を見る。




「ブータンの馬鹿ぁ。でもサーヤは優しいから銀貨3枚で許してあげる~。じゃあまた明日ブータン」




 のぉぉぉぉぉ。代償は思ったより大きかったようだ。




 今日も馬小屋確定か。テンションだだ下がりだ。




 俺はとぼとぼと帰って行く。夕日が目に染みるぜ。泣いてはない、これは心の汗だ。




 イケメンの夕日バックは絵になるが、不細工の夕日バックなんて誰得だよ。




 酒飲みたいなぁ。




 一途の望みをかけ宿屋の食堂で文無しでも酒が飲めるか聞いたところ、ゴミを見るような目で見られた。ついでにあずさもその場にいて、同じ目で見ていた。宿は他にあるのになぜだぁ~なぜなんだぁ~。




 大分後に聞いた話によると、ここの宿屋は、英雄ギルド公認の異世界人にあった食事を提供する店らしい。




 通りで、美味しく、カードさえ持っていればただでも食え、馬小屋だが泊まれたはずだ。




 何で知らなかったって。誰も教えてくれないからだよ。




 端で縮こまって食べた後、無言の圧力で、逃げるように食堂を出て、馬小屋に入る。




 今日も藁がわらかいぜ畜生。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る