20210919「定義」
今日もソファーの上で目を覚ます。
最悪な気分だ。
その後、大学で友人に会う。
私のこの大学内の知り合いの中でも上位に食い込む変人だとみんなに言われているようなやつだ。
長らく会ってはいなかったが、四年の後期で授業が被ったのだ。
友人は口を開いた。
「なあ、世界には優しい人が少ないな。」
「この前、授業中に何故だか泣いている奴が居たんだけど近くの席の奴らはまるで気にもせず自分のことばかりをしていた。」
「優しい人はどこにいるのか」
私は、久しく会っていなかった友人から最初に出てくる言葉は「久しぶり」の一言だと思っていたが、彼にはそんなことは重要ではないようだ。
私はそんなことを思いながら答えた。
「本当に優しい人は優しいが故に優しさを怖がっているからじゃない?」
「なんだそりゃ?」
「秋山はその困ってた人に声をかけたの?」
「もちろん」
「それはとても優しいことだ。
でも、声をかけなかった人のことを俺は優しくない人間だとは一概には言えないと思う。」
「なんで?」
私は昔読んだ本のセリフを思い出しながらこう答えた。
「優しさにはたったひとつだけ問題がある。
それは一歩目を踏み出すかどうかだ。優しい人ほど一歩目を慎重に踏み込む。そんなことを昔読んだ本で誰かが言ってた。
本当に優しい人は、優しいが故に誰かを傷つけることをとても怖れてるんだよ、たぶん、わからないけど。
その泣いていた人だって声をかけて欲しかったのか、それとも見て見ぬフリをして欲しかったのか、それは涙を流してる本人にしかわからない。
優しい人は、自分の優しさが誰かを傷つけてしまうんじゃないかと心から恐れてる。
だって、優しいから。」
友人は間を空けずに私の言葉に続いた。
「泣いている人がいるなら、まず声をかけるべきだろ?そこから始めるべきだ。
一歩目は鈍感でいい。」
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