ガラケー学会員の鷲本さん
ませがきぃ
スマートフォンと憂鬱な休暇
実にだるい日である。
大宮公園。所々に緑の葉をあしらった大樹が聳え立ち、草原を子供達が駆けていくのがみえる。ほどよく濁った池の上には紅色の太鼓橋が顔を覗かせている。そんな、風情のある景色とついを成すようにベンチに佇む一人の男。俺、鹿島秀俊はただ無気力にスマホの液晶を眺めていた。
4.7インチの画面に映るのはクラスラインの殺伐としたトーク履歴。今日は学校が休みなので、せめてもの気晴らしに公園に来ているわけだが、スマホが振動を起こすたびに現実に引き戻されるような感覚に襲われる。別に、虐められている訳でも陰口の標的にされている訳でもない。ただ、俺のクラスの活気が沈殿しているだけなのだ。休み時間、ただ、液晶を見るのみ。会話などない。SNSに取り憑かれた人間の溜まり場である。かくゆう俺もこうして緑色のSNSに目を通している。同じ緑でもこうも変わるものかね。いずれ、スマホのような画面が手の甲にへばりつくなんて時代も来るのではないか。いや、いずれ来る。結局、人間は依存と機械の進化によって成り立っているのだ。静物が進化すれば生物は退化する。そんな気がした。
目と心が疲れたのでスマホからは目を離すことにした。折角外にいるのだ。緑豊かな大宮の姿を目に焼き付けてしまおう。別にエコロジーな人間という訳ではないが、草木を見ると妙に落ち着くのである。そんな不思議な感情に浸っていると、ある一人の女性が歩いているのを見た。上下、緩やかな布を纏い、スカート丈は膝より少し高い。腰あたりまで伸びている艶のいい黒い髪、シアーベージュに近い華奢な肌。正直、美少女といっても差し支えない。
鹿島の思考は完全にDTのそれであった。どんな眼をしてその黒髪をみていたかなんて聞きたくもないだろう。そんな時、偶然その人と目が合ってしまった。南無三、ジロジロと卑猥な目で見ていたのがバレた! なんて思っていると、咄嗟にその少女はこんな言葉を口にした。
「今すぐそのスマホから手を離してください!穢れてしまいます!!」
え?
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