第30話

うだうだと言ったが結局戦う羽目になった

ほんとあのクソ教師許さんからな…


武本と20mくらい離れて向き合う

その周りを囲むようにクラスの皆が見ている


まるで担任と藤原が戦った時の再現のようだ


「「かしこみかしこみ申す。霊装展開!!」」


俺の体が青白い光に包まれる

対する武本は白い光に包まれる


徐々に光が収まる


俺の手には何の変哲もない剣

武本は両手で薙刀を持っていた


武本「ああああぁぁぁぁ!!」


開始の合図も聞かずに向かってくる武本


15mほど走った所で勢いそのまま地面を蹴る

武本は5mほど跳び上がって下降する勢いを利用して薙刀を振り下ろす


流れるようなその動きはこの攻撃を何度も練習した事を物語っていた


だがそんなのは関係なく俺が勝つ

勝ってしまうのだ


俺は冷静に武本の振り下ろす薙刀を見極め、剣で受け止める

ただそれだけ…


武本「……は?」


俺が受け止めた場所から薙刀はポッキリと折れた

武本は勢いを止められずそのまま地面に直撃して転がった


武本はすぐに立ち上がる

怪我は無さそうでよかっ…


武本「なんで…なんで…」


武本の顔はまるで、死の宣告をされた人間のような表情だった

負けたくらいでなんでそこまで…?

でも今の俺が何を言っても煽りにしかならないだろう


こうして俺と武本の戦いは、担任と藤原の戦いの再現のように終わった

違ったのはなんとも言えない後味の悪さと空気の重さだった…


武本は担任の制止も無視し、どこかへと行ってしまった


黒川「あべちゃんすげぇじゃん!」


空気クラッシャーが嬉しそうにやってきた

こういう時は助かるな…


杉山「いつの間に…てか俺たちにも教えろよな!!」


教えられるほどの確信はなかったから言わなかった…

それが今確信に変わったので俺は2人に説明した


霊装が使えない事で俺は皆からかなり出遅れていた

その差を埋めるためにどうしたらいいか必死に考えた

俺がお手本に出来たのは藤原と2年の先輩達と担任

この中で俺は担任を選んだ

性格はクソだが、その実力は信用している

だから担任の戦いと最初に言った言葉について考えた


――まず霊装とはなんだ?武器か?


――あとは霊装展開する時の霊力の色


――そして藤原の双剣を生身で破壊した事


俺は1つの仮説を立てた

霊装は霊具だ

それは何処にある?身体の中だ

なら霊装とは武器の部分だけでは無いんじゃないか?

だから担任は生身で双剣を破壊できたのではないか?と


だから俺はひたすらイメージし続けた

自分の体を覆うイメージを


そしてようやく霊装展開出来るようになった時、俺の仮説は正しかった可能性が上がった

俺が霊装展開する時放った光は白ではなく青白かったから


「とまぁ…こんな感じかな?藤原も気付いてたんだと思う」


担任「解答としては50点だが現時点では上出来だな」


それなら100点の解答を教えろよ!と思ったけど言っても無駄なのでやめた


黒川「先生なんであべちゃんの方が藤原よりつぇーんだ?」


それについては俺も気になっていた

藤原も俺と同じ様にイメージ出来ているなら俺の方が強いのはおかしい


担任「癖だ」


「は?癖って…そんな」


担任「癖だなんてそんな問題かって?それは藤原本人がよく分かってる筈だ。なぁ?」


藤原は首を縦に振った


担任「単に癖っていうが簡単には直し辛いもんなんだよ、それをやってた時間が長ければ長いほど…な。そうだな…サッカーで例えよう。急にルールが変わって手に当たっても良くなったとするだろ?初心者ならすぐにこのルールに順応するだろうが何年もやってきた奴はどうだ?手に当たらないようにする癖が体に染み付いて頭では分かってても出来ないんだ」


確かに…藤原は10年以上今まで通りの霊装展開に慣れてる


担任「だから一学期の間はお前達に時間をあげたんだ」


杉山「それなら説明してくれたって…」


担任「お前らはすぐ納得出来たか?」


杉山「グッ…確かに…」


担任「焦らなくても大丈夫だ!2年でも出来てない奴の方が多い。でもお前らは…わ、た、し、のお陰で?無事強くなれるって訳だ!感謝しろよ?」


言ってる事は正しい…

正しいけどムカつくな


こうして最後の陰陽術の授業は全て担任に持っていかれて終わった

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