第3話 凛水・変わらない日常

私は今日、中学校に入学する。

それだけのことだ。

中学生になったって、私を取り巻く周りの状況なんてどうせ何も変わらないんだから。


大きな門に立てかけられた入学式の看板を見て、私はため息をついた。


いつだって私はそう。

みんなとうまく話すことができなくて、もう話すこと自体が面倒になって、わざと不愛想に振舞ってきた。

だから、小学校でも嫌われていたし浮いていた。冷たくてドライな性格だから「フリーズドライ」なんて呼ばれていた。

別に気にしてるわけじゃない。

浮いたって嫌われたって、みんなと関わらないことが私にとって一番いいのだ。


「……」


私は立ち止まった。


――本当は違うのかもしれない。私は自分が何を願っているのかわからない。


「リズ、写真はとらなくていいの?」

「その呼び方やめてってば。私の名前は凛水りんずなんだから。写真は別にいいよ」

「そう。ならいいけど…」


隣でピースして母親に写真を撮ってもらっている女の子を見て、里親の山脇やまわきさんが私に声をかけてくれた。


竜巻で家族と生き別れ、施設で生活していた私を引き取り里親になると山脇さんが申し出た時から、私はこの人に何度もお世話になり、助けられてきた。

山脇さんとの生活は楽しい。

私が唯一楽しく過ごせる場所は、家だ。

中学校だって、お金がかかる私立の中学校に行かせてくれた。


うん……中学校か。

ま、何も変わらないだろうけど、せっかく行かせてくれたんだし行く価値はあるよね。

中学の人にたくさん聞いてみれば、生き別れた妹と弟の行方もわかるかもしれない。


よし。行こう。


私は再度ため息をついて門をくぐった。

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