第29話
覆面男がエンジンをかけている。
美世は目を見開き、必死に逃げようとのたうち回っている。
「冗談でしょ? 冗談だよね!?」
後ろにいる覆面男にそう聞いても、やっぱり返事はなかった。
「安心してくださいね。命に別状はないよう、ちゃんとすぐに手当てをします」
画面上の男がそう言い医療道具を撮影した。
傍には白衣を着た男の姿もある。
本物の医者だろうか?
「でも気を付けてくださいね。本人がむやみやたらに動くと、その首を掻っ切ってしまうかもしれない」
男がそう言うと、美世が動きを止めた。
両目からとめどなく涙があふれている。
「さぁ、行きますよ」
男がそう言い、チェンソーを美世へ向けた。
美世が目を見開く。
見ちゃだめだ。
そう思うのに、目をそらそうとすると後ろの男が無理やり前を向かせてきた。
その為にあたしたちはここに座らされていたようだ。
画面上では美世の顔にチェンソーが近づいていく。
こんなの嘘に決まってる。
本当に顔を削ぐなんてこと、できるはずがない。
あたしの鼓動は最高潮まで達していた。
今にも気絶してしまいそうだ。
強い動悸に息切れがする。
次の、瞬間……。
画面上に血が飛び散った。
美世の顔にチェンソーの刃が押し当てられたのだ。
粉々になった肉片が部屋のあちこちに飛び散る。
「目玉は残しておいてあげるからね」
画面上の男がそう言い、美世の頬を削り落としていく。
美世は絶叫したくてもできない状態でひたすら痛みに耐えている。
チェンソーは美世の頬の表面をはぎ取り、鼻へ到達していた。
「う~ん。鼻を削いだら死んじゃうよね? ここは難所だなぁ」
男はブツブツと呟きながら、美世の鼻にチェンソーの刃を這わせていく。
軟骨のない下の肉がごっそりとそぎ落とされ、その下の唇も消えてなくなった。
真っ赤に染まる美世の顔に一気に吐き気が込み上げてきて、その場に嘔吐してしまった。
ロクに食べていないけど、ミルクの匂いが鼻につく。
「さぁ! ラストだよ!」
男はそう言い、残っている頬に取り掛かった。
美世は白目をむき、気絶してしまったようだ。
ギザギザに切り取られた肉片が、まだ顔にこびり付いている。
そして男は逆側の頬もすべてはぎ取ってしまった。
美世の体は力を失い、ダラリとされ下がっている。
その後すぐに白衣を着た男が駆けつけて来た。
「みなさんどうでしたか? スカッとしたでしょう? チェンソーで顔を削ぐのはスリリングで素晴らしい制裁だったと思います! この子への制裁は終わりました。これから先も心を入れ替えて生活してくれることでしょう」
男がそう言って画面が引いた時、そこにはもう美世の姿はなかったのだった。
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