第45話 「先輩達のお蔭で」
(蒼汰)
先輩達より先に航達が菓子を買って家に来た。
その後、先輩達が両手にお菓子とジュースを抱えて到着。
しかも、ゲストが一人増えていた。
早野先輩も有名だが、この人の事を知らない生徒は居ない。
十一月末で引退になるが、現生徒会長だ。
「上条君。少し君の部屋を拝見させて貰うよ」
眼鏡の端を光らせながら、夏目先輩は階段を上がって行った。
「俺にマロンちゃんシリーズの事を紹介してくれたの、あ・い・つ!」
「どうしても一緒に行きたいって言うから、連れて来てしまった。すまん」
先に階段を上がっていく夏目先輩を指さしながら、早野先輩が事情を説明してくれた。
ねえ、一体何が起こっているの?
俺の部屋に、何が集結し始めたの?
まさかこの後『闇の勢力が迫っている。蒼汰を俺ら三銃士に加えて、今日よりこの世界を守る四銃士の誕生だ!』とか始まっちゃうの?
だったら、エロ装備の女騎士とか何人か必要じゃないですか?
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「そ、蒼汰。この夢の国は何だ。何故今までお兄さんに黙っていた。酷いじゃないか」
「壁一面の小説に漫画。フル装備のゲーム環境。そしてフィギュア棚だと……」
「くっ。このシリーズも持っているのか……。しかもこれ初版本じゃないか。何者だ君は」
「蒼汰。今日からこの家の子供になっても良いか? ちゃんと蒼汰お兄ちゃんって呼ぶから」
「蒼汰。この本借りて良いか? 絶対汚さずに返却するから」
「明日から生徒会室ここに変更するか……」
ひとしきり大騒ぎすると、先輩達は持ち寄ったお菓子を広げ始めた。
航達が買ってきたのも合わせると、ちょっとしたパーティーの様になってしまった。
夏目会長のことは、全校集会の壇上でいつも厳しい口調で話す姿しか見たことが無い。とても話し
早野先輩の女性遍歴。陸上部の部室の秘密。生徒会の裏話。
男だけの集まりだからこその話を沢山聞けた。
色々話が盛り上がり、最後は「蒼汰を生徒会長選に立候補させて、生徒会長にしよう」という、とんでもない話になって来たので、土下座して止めて貰った。
よく考えたら、自分の部屋にこんなに沢山人が来たのは初めてだ。
これまでずっと独りで過ごす方が気楽で楽しいと思っていた。
人と一緒に過ごす時間が、こんなに楽しいとは思っていなかった。
本当に先輩達に感謝だ。
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日も暮れて来て、そろそろお開きという時に玄関のドアが開く音がした。
来栖さんがやって来たのだろう。
家政婦と聞いて何を期待したのか、先輩達は興味津々で来栖さんを見に行った。
いきなり高校生男子が何人も降りて来て、来栖さんも驚いたと思うが、先輩達はもっと驚いたようだった。
まあ俺は見慣れているし、話も良くするから最近は何も感じないが、初めて来栖さんのあの姿を見るとやはりギョッとするよね……。
微妙な空気が流れて来栖さんに申し訳なかったと思っていたら、
「初めまして。蒼汰君のマブダチの早野です。今日はお邪魔しました!」
「マブダチ二号の望月です!」
「今日からマブダチ三号の夏目です。今後とも宜しくお願いします」
そう言って直ぐに場を和ませてくれた。流石だ。
来栖さんも、その挨拶を聞いてお腹を押さえながら笑っていた。
バス停の辺りまで先輩達を送る事にした。
道すがら、また面白い話を聞かせてくれた。
俺はこれまで自分があまり人と関わらない様にして来た事や、先輩達のお蔭で最近学校が楽しい事、そして今日がどれほど楽しかったか正直に話した。
少し涙声になっていたかも知れない。
「蒼汰。お前は俺の可愛い後輩だ。これからも宜しくな」
早野先輩が俺の背中をポンポンと叩いてくれた。
「俺もよろしくな」
望月先輩は頭を撫でてくれた。
「生徒会室に遊びに来いよ。まあ君が来なくても、第二生徒会室になった君の家に行くけどな。それと生徒会長選への立候補も……」
夏目先輩のどこまで本気か分からない言葉に笑ってしまった。
いや、生徒会長とか絶対有りえないからね!
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