アメリア視点

 学園を卒業するまでにあと一週間となった頃、第二王子殿下から知らせが来た。他の貴族連中はあらかた片付いたので、ここもトドメを刺すらしい。


「メアリー、メアリーはいるか!」

「はい〜、ここにいますよ、お義父様〜」

「メアリー、第一王子との関係は良好か?」

「はい〜、以前、プロポーズをされました〜」

「そうか、そうか。これで俺も…ぐへへへ」


 この私の目の前にいる気持ちの悪い笑いをしているのが、ブルーム男爵家当主です。男爵のくせに隣国に唆されて、非現実的な夢を持ってしまった哀れな男です。もうそんな夢が叶うことはないというのに、ほんと、可哀想な人。まあ、どうでもいいのですけどね。


「それにしてもローズ家は厄介だな。早く第一王子が潰してくれないものか…」

「…そんなことできるわけないじゃないですか。本当に愚かな人ですね」

「なっ、メアリー、どういう…」

「動くな」


 影の先輩方がブルーム男爵家当主を囲む。喉にはナイフが突きつけられている。こんな状況なのに、彼はまだ怒鳴る元気があるみたいですね。


「メ、メアリー。こいつらは誰だ!」

「影ですよ。王族直属の。あなたも知っているでしょう?」

「何を。それにその喋り方はなんだ。まさか!お前、裏切ったのか!」

「裏切ったとは心外ですね。あなたは第二王子殿下を味方だと思っていたのかもしれませんが、あの腹黒王子はあなたのことなんて信用していませんでしたよ。残念でしたね」

 

 第二王子殿下とこの男が取引していた内容は、私を養子とする代わりに、私が第一王子と付き合うことができれば、相応しい家柄を用意するということでした。

 二つ返事で了承していたのですが、もちろん、この取引には裏がありました。


 一つ目は私が学園に貴族として入学できること。これは私が第一王子との恋仲を発展させ、ソフィア様から婚約を解消させること。

 そして、二つ目はこのブルーム男爵が隣国とのきな臭い取引がされている証拠を掴むこと。商人をいくら捕まえても、大本を捕らえないと意味がないため、内側から調査すること。


「アメリア、お疲れ様です。今日までよく耐えましたね」

「先生…ダメですか?」

「ダメですよ。彼にはいろんなことを話してもらわないといけないのですから」

「…わかりました。私はこれからどこへ行けばいいのですか?」

「私と一緒に来てもらいます。次はそこでお仕事です」

「わかりました」


 これでようやく私の仕事は終わりました。あとはあの腹黒王子がなんとかするのでしょう。


 次は直接ソフィア様に関われる仕事がしたいです。

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