24:推察
イデアルとの稽古が終わった直後にマイラが目を覚ましたという知らせが届いた二人は部屋へと向かう。
部屋にはライブスを始めセラとフラウも集まっており、ライブスはマイラを診察すると穏やかな笑みを浮かべた。
「魔眼も魔力の流れも落ち着いてきてますな、とりあえずは問題ないでしょう」
それを聞いてイデアルとキリムはほっと息をつく、フラウはマイラの前に来るとゆっくりと話し掛けた。
「話しても大丈夫かしら?」
「はい…」
「無理には言わなくて良いけど出来るなら教えてくれない?貴方その眼で何を見たの?」
フラウの問いにマイラはきゅっと口を絞る、だが少ししてぽつぽつと自分が見たものの詳細を語り出す。
「最初は見た事もない大きな街が見えたんです…けど突然白い光の後に燃え上がって、その後は山にも海にも焔が広がっていきました」
「焔…」
「見えるものが全部焔で包まれたらその中でまた白い光が見えたんです、それは一際強い光ですぐに何も見えなくなりました…」
「そう…」
「あ、でも…見えたのは一瞬だけですけど覚えてるものがあるんです」
その言葉に部屋にいた全員の目線が集まる、マイラは少し体を震わせながらも見たものを口にした。
「翼があったんです、見えなくなる直前でしたけど白く輝く翼がその光にはありました」
マイラはそれを伝えるとふらりと体が傾く、イデアルがそれを支えるとクゥと腹の虫がなった。
「起きてから水しか飲んでいませんからな、負担の少ない粥を用意させましょう」
ライブスの言葉にマイラは頬を紅く染めながら頷いた。
―――――
「先生は彼女が見たものがなにか分かりますか?」
部屋を後にしたレイル達は廊下を歩きながらマイラの話を推察する、だがフラウは難しい顔をしながら語り出す。
「中々絞り込めないわね…山や海、つまり世界を焼き尽くす様な焔だけなら心当たりがあるけど白く輝く翼というのが気になるわ」
「その焔というのは?」
「ダンジョンの神話層に潜ってた時に見つけた壁画にそういったものがあったのよ、周囲にあった遺跡は朽ち果ててたけど無事だったものを解読したの」
さらりととんでもない事をやってのけているフラウに驚くレイル達を気にするでもなく話を続ける。
「壁画には神すら恐れし巨人の記述があったわ、“燃え盛る火の体を持つ者、世界を焼き尽くす枝の如き剣を持つ”ってね」
「枝の如き剣…?」
「他にも焔に関する記述があるものはあったけど世界を焼き尽くすと明記されていたのはそれだけよ、私が調べた範囲ではの話ではあるけど…」
フラウの話にレイルとセラは顔を見合わせる、確かにそれならマイラの話とも噛み合うが輝く翼がなんなのかは確かに分からない。
「…どちらにせよ、あの子が見たのは歪められた聖具のイメージだと私は思うわ」
そう言うとフラウはレイル達の方に向き直る。
「セラ、研究に戻るわよ、あれが完成すれば少なくとも他の奇跡が現れた時の切り札になるわ」
そう言いながらフラウは自室に戻る、レイルとセラは頷き合うとセラはフラウの後を追った…。
―――――
人気がなくなった山岳地帯では生態系が一変していた、山に住む動物や魔物達がより強大な存在によって喰い荒らされていたからだ。
木々をへし折りながら翼のない竜種達が獣達を喰らう、
その山の頂では同種である筈の竜を喰らうクロムバイトの姿があった。
「人が人ならば竜共もか、揃って腑抜けたものばかり数が多くなりおって…」
口の回りが血で紅く染まったクロムバイトが毒づく、だがウェルク王国の方へと顔を向けると笑みを浮かべた。
「まぁ良い、あと少しで肉体の同調が終わり万全で戦える、馳走の前の準備だと思えば楽しみが沸くというものよ」
見る者全てが震え上がる様な残虐な笑みに顔を歪ませながらクロムバイトは呟く。
「待っていろエルグランド、そしてレイル…今度こそ貴様等を魂まで喰らい尽くしてやろう!!!」
そう宣言するとクロムバイトは再び息絶えた竜を喰らい始めた…。
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