集う者と奇跡の暗躍

1:魔術とは

セラとパーティーを組んだ翌日。


レイルはセラと共に冒険者ギルドに向かう道を歩きながら話していた。


「…それで、魔術に関してはどれくらい知ってる?」


「えっと…魔力を様々な現象の動力にする…だっけか?」


「…わからないって事で良い?」


「…すまない」


魔術に関してはほとんど知らなかった、アレッサとかに聞いておけば良かったかも知れない。


「…じゃあ、最初から教えるね?」


「あぁ、よろしく頼む」


「…ん、まず魔術というのは魔力を使って法則を改変し、現象を起こす技術の事」


そう言うとセラは手のひらに魔力を集める。


「…本来は魔力操作による身体強化は無属性魔術の一種、でも私の様な魔術士達は無属性の魔力に属性を持たせて現象を起こす事を魔術と呼んでる」


セラの手のひらに水の球が浮かぶ、ふよふよと浮かぶそれを見せながら講義は続く。


「これは無属性だった魔力に水の属性を与える事で魔力を水に変化させたもの、そして属性の変化の次は現象の付与、例えば“飛べ”」


短い詠唱と共に水が真上に打ち上げられる、あっという間に水は上空に消えてしまった。


「…現象の付与はイメージが重要、詠唱するのはこのイメージの固定化が目的のひとつとしてある」


「イメージの固定化?」


「あらかじめ詠唱の文句を決めておく事で起こす現象や出力を一定に保てる、だから詠唱する魔術士は多い…私は基本してないけど」


「なるほど…ってしてないのか」


「イメージが出来れば詠唱は必要ない、私が詠唱するとすれば威力を上げるのと魔術構築の補完の為」


「そう言えば目的のひとつと言ってたな、それが詠唱の他の意味か?」


「…ん、大規模な魔術は構築が難しい上に凄い魔力を使う、少しでも魔力消費を抑えるのと構築しやすくする為に詠唱する」


「なるほどな…」


アレッサはよく詠唱をしていたがあれはどちらかというと威力の底上げの為にしていたのかも知れない。


…ときおり“うっさい!”とか“ぶっ飛べ!”とか叫びながら魔術を使っていたがあれも詠唱だったのか?


「…属性に関しても教えたかったけど、それは後で」


声を掛けられギルド前に着いたのに気づく。

とりあえず今日はパーティー結成の報告をしてから街の外でセラと鍛練がてら魔物を倒す予定だった。


そうしてギルドに入ると…。


「セラちゃぁぁぁぁぁんっ!!!」


いきなり誰かが飛び掛かってきた。

思わず二人で左右に避けると間に吸い込まれる様に通り抜けていく。


「あれぇぇぇぇぇぇっ!?」


飛び掛かってきた影は流れる様に着地するとこちらを振り返る。


それは女性だった、黒髪黒眼でメリハリのある体をぴっちりとした服と軽鎧で覆っており、腰には大きめの鞄と刺突剣エストックを差している。


「セラちゃん!」


「…シャルさん、いつ戻ったの?」


「ついさっきよ、街に戻ったらこんな事になってたから気が気じゃなかったわ!」


シャルと呼ばれた女性はそう言ってセラに抱きつく、セラも今度は避けずにされるがままにされる辺り親しい仲なのだと伺える。


「良かったわぁ~、見た所怪我もな…く…」


セラを抱擁したまま動きが止まる、その目線はローブの下に隠されていた首輪に向かっていた。


…しまった、彼女とアレをどう説明するか話し合ってなかった。


「セ、セラちゃん?変わったチョーカー着けてるわね?なんだか奴隷の首輪に見えるのは私が流行を知らないだけかしら?」


不味い、シャルどころか周りも聞き耳立ててる。

返答次第では更に状況が悪くなるだろう、思わずセラに上手く収める様に視線を送ると彼女は…。


「…隷属の輪です、レイルとパーティーになる為に必要でしたので」


特大の爆弾を落とした。


「「「え、えぇぇぇぇぇっ!!!!?」」」


その日、レイルは別の意味で名を広める事になった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る