7:雷を斬り裂いて
「く…うぅ…。」
ふきとばされた衝撃が全身に走り、礫と土にまみれながらレイルは身体を起こす。
前を見ると部屋の中心にクレーターができており、フルフルはその中心で体を震わせて砂ぼこりを落としていた。
(またあれが来たら次はかわせない!)
悲鳴を挙げる身体を動かしてすかさず斬りかかるがフルフルはこちらを認識すると再び宙を駆けて距離を取ると角に再び魔力が集められていく。
身体に痺れが走る、あの突撃は直撃こそ避けたが放出された雷がレイルの身体を苛んでいる。
…ひとつだけ手はある、だが策とは言えない賭けにしたってあまりにも分が悪すぎるものだ。
ここまでなのか…今の絶望的な状況にそんな考えが流れてくる。
雷が撃ち出される、それがレイルを貫く寸前黒く染まった刃が翻り、雷を斬り裂いて霧散させる。
「ふざけるな…」
今しがた浮かんだ考えを拒絶する、最強になると決めた、その為にここへ来た、立ち塞がる全てを超えていくと残された命に誓った。
ならばこんな所で、この程度の魔物を倒せなくて最強になどなれる筈がない!
分が悪い?なら僅かな勝ちの目を引き上げろ。
一の勝ちを二に、二を十にする為に動け。
勝って生き残る道を開く為に自分の限界を超えろと魂が叫ぶ。
撃ち出される雷を避けながらポーションを飲み干して少しでも体力と魔力を回復させながら身体強化で体を無理矢理動かしてその時を待つ。
視界にチカチカとした光が映る、肺が破れそうな程に苦しい、それでも上空にいる敵からは目を逸らさない。
「クオオオオオッ!!」
フルフルが叫ぶ、今なおレイルを仕留められずにいる事に苛立ちを感じているのか再び雷を全身に纏って態勢を整えようと駆ける。
その瞬間レイルは足に魔力を集中させて跳ぶ、そして宙を蹴って駆け上がっていく。
フルフルが驚愕に動きを止める、目の前の人間が自分と同じ様に宙を駆け上がるなど予想していなかった事態にらしからぬ戸惑いを見せた。
「あああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
獣の様に叫びながら剣を振りかぶる、駆け上がりながら剣に過剰なまでに魔力を流し込んでいくと魔力が黒い刃となって空間に尾を引いて輝く。
我に返ったフルフルが全身に纏った雷を放出する、駆け上がってきたレイルを撃ち落とさんと雷の網が迫るが迎え討つ様に剣が振るわれる。
振るわれた剣から黒い斬撃が解き放たれ、それは迫りくる雷を喰い破り、そのままギロチンの如くフルフルの首を斬り落とした…。
―――――
着地と同時にフルフルの首と胴体が落ちてくる、それを見届けて思わず座りこんで息を吐く。
死ぬかと思った、ただそれ以上に成果はあった。
自身が最後に放った『
「流石に今日は無理だな…」
心身共に消費した上にポーションも使いきった、竜と戦うとなれば新しく会得した技も完全にものにしておきたい。
考えをまとめたレイルはフルフルの首と皮を回収すると『天竜の封窟』を後にした…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます