Game5

 目を開ければ、馴染みある部屋の天井が目に入った。

 辺りを見ればカーテンの隙間から、日の光が差し込んできて、まぶしくて目をつむる。

 まぎれもない、自分の部屋だ。


 体の痛みはない。

 もちろん傷もなければ、どこかから血が出ていることもない。


 ベッドから飛び起きて、スマートフォンを確認した。

 画面に表示された日付は四月一日。

 

 ゲームオーバーになってから、やっぱりこの日に戻ってきている。

 死んだら四月一日に戻るのではないか。

 確証はないけど、可能性が生まれた。


 学校に行けば、事故死。

 アルバイトの掛け持ちをすれば、帰宅途中で殺される。

 どうしたら生き残れるか。


 ありとあらゆる選択を間違えずに行うしかないのか。


 死なずに済む方法を探し始めた。


 まず学校には行かない。

 そして、アルバイトの帰り道は、不審者情報を調べて注意をしながら自転車で帰る。

 殺された二十日は、同じ道を通ることを避けた。そうしたら、その日あの場所で誰かが殺されるという事件が起きていた。


 死を回避できたと喜んだのもつかの間、アルバイト先に強盗が入って俺は死んだ。

 そして同じくゲームオーバーから復帰して、同時刻はバイトを休んだ。そうしたら、店長が殺された。


 店長がいなくなったことで、バイト先はつぶれた。

 代わりに見つけたバイトはラーメン屋。

 だけどそこで働き始めて三日目で、火災が起きて俺は死んだ。


 またまたゲームオーバー。

 復帰して、バイトして、帰り道を変えて、一日休んで、ラーメン屋じゃなくて書店のバイトにして。

 そうしたら今度は、書店が入るビルが燃えて死んだ。


 そのあとも何回、いや何十回繰り返しただろうか。

 その回数と同じ回数死んで来た俺。

 戻る日付は四月一日。

 なかなか五月を迎えられない。


 これはもう、死ぬ運命から逃げられないんじゃないか。

 そう思って歩いていたら、久しぶりに甲高い叫び声と、ブレーキ音が耳をついた。


 顔を上げたら、目の前にトラックが。

 久しぶりにトラックに轢かれて死ぬことを覚悟した。

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