お前は要らないと天上界を堕とされたけど、ゼロと判定された魔力特性値が実は無限大♾だったので世界を救ってみます! 〜無限大♾のマギアスキル《ゼロ》〜 戻ってきてと言われてももう遅いよ?

友坂 悠

第1話 になる!

「だからさ。


 君はここで消えるといいよ」


 目の前の悪魔の頭に手のひらを近づけ、マナを集中する。


「そんな! 馬鹿な! お前は魔力特性値マギアスキルゼロの筈!」


「さあね。っていうか僕、魔法が使えないなんて一回も言った事ないんだけどな」


 自らの周囲に炎の因子が集まるのがわかる。


 イリスはそのまま右手に集まった炎の因子、アークに自らのマナを注いだ。


「ファイヤーバースト!!」


 爆発的に膨らんだその高熱の炎が目の前のかつて神父の姿をしていたそれ、を、焼き尽くした。


「まあね。これで殺せるとは思ってはいないけれど」


 そう呟くと彼は周囲に張り巡らされた結界を解除。はざまの空間を反転させる。



 世界に色が戻った。


 停止した時空の中で固まっていた子供たちが動き出し、目の前にいたはずの神父が忽然と姿を消した事に驚きざわめく。


 観覧席の親たちも騒ぎ出した所で教会の関係者たちが出てきてその場を収めた。


 そして。代理のシスターによって無事その後の儀式を終えたのだった。






 ☆☆☆☆☆





「べたかな?」


「べただよね?」


 あたしのセリフにそう合わせてくれる亜里香。


 あたしの親友でありオタ共。腐女子仲間の横山亜里香よこやまありかはあたしのベッドにごろんと横になると、パソコンの前に座ってるあたしにむかって、


「でもさ、真希那の小説はそこが味になってていいんじゃない?」


 と、そう言った。


 ふむむー。でもさ、あんまり読まれないんだよねこれ。


 そう思って返事できないでいると。


「まあ、自分の好みばっかり書いてるから一般受けはしないよね」とそうダメ押しも。


 確かにね。


「たださ、今回のおはなしって男の人が主人公なんでしょう? BLじゃない男の人なんて、真希那に書けるの?」


 はう。


 それを言われるとちょっと辛い。


 感覚的なもの? かな。


 サブキャラなら問題なくても主人公の心情とかそういうの? 確かにちょっと難しいし。


「どうしよう」


「どうしようっていわれてもねー。結局あんたの分身にするしかないんじゃない?」


「そう、だよねえ。いっそのことあたしが転生しちゃえば楽かもだけれどもー」






 亜里香が帰ってから一人ベッドに横になって考える。


 あたし、水森真希那みずもりまきなは高校2年生。小学生の頃からちまちまおはなしを書いてたけど最近『小説家になる!』っていうwebサイトにおはなしを載せはじめたばかりの素人web小説家、なのだ。


 今日も今日とて連載してるおはなしを書いて投稿した所なんだけどもう一つ反応が良くなくて悩んでて。


 でもって親友の亜里香に感想を聞いてた所。彼女はわりと素直に感想を述べてくれるから。


 そういう友達はほんと大事だなぁとおもいつつ自分の書きかけの原稿を見る。


 主人公は10歳になったばかりのショタ。美少年って感じ?


 異世界ファンタジーってジャンルなんだけど、剣とか魔法とか、ドラゴンとか魔王とか、そんな世界のおはなし。


 この世界では魔力の大きさは本人の持つマナかける魔力特性値マギアスキルで決まる。ようはマナが少なくても特性値が高ければその分沢山の魔力で大きな魔法が使えるってこと。


 そんな中、主人公の少年は肝心の魔力特性値マギアスキルがゼロだって判定され……。


 特性値ゼロってことは魔法が使えないってことだからね?


 マナがたくさんあってもゼロをかけ算したらゼロ。魔力ゼロになっちゃうし。


 天上界で生まれた主人公はそこで魔力特性値がゼロだということで追放され地上に墜とされる所からお話がはじまるの。


 実はそのゼロと判定された魔力特性値マギアスキルは無限大の間違いで、主人公は魔力チートで大活躍するんだけどね?


 俗にいう追放もの?


 貴種流離譚にもなるかなぁなんて思って、いいアイデアだと思ったんだけどな。アップしてみた結果は散々だった。


 評価はおろかブクマ一つとしてつかない総合評価ゼロ。


 もうね。思いっきりテコ入れしなきゃモチベも保てないよ。そう思いつつ……。



 あたしは寝転がったまま手元のタブレットでおはなしの続きを書き殴った。


 パソコンよりもタブレットの方がどんな姿勢でも書けるから好き。


 にゃぁんと寝転がったあたしの上に乗ってきた猫のミリムを撫でながら、あたしは眠くなるまでおはなしの続きを書いた。ブラックアウトするまで。

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