第24話 デオックの策略 【ざまぁ回】

 

〜〜デオック視点〜〜


 クソッ! とんでもねぇことになってやがる。

 ギルドの酒場ではゼロの噂で持ちきりだ。あのゼロ・バンカーが生きてやがったのか!


 宿屋には賢者ガルパチョフの死体。

 ギルドの受け付けに聞くと、魔法使いドドは病院で殺されたらしい。

 霧丸は街から消えた。


 おそらく、この3人はゼロの野郎に殺されたんだ!

 あいつは相当、俺達を恨んでいたからな。復讐しに来たに違いねぇ。


 さぁ困ったぞ。俺が街を大っぴらに歩くことはできねぇ。

 何せ、賞金稼ぎが俺の首を狙ってやがるからな。

 ギルドの借金は宿屋の修繕費用やらなんやれで100万ゼニーにまで膨れ上がっちまった。

 宿を壊したのはゼロだってのによ。俺に請求がいくなんて納得ならねぇぜ!

 

 クソォオオ。冒険は失敗続きだし、仲間はバラバラ。街に出れば賞金稼ぎに命を狙われ、ギルドには借金まみれ。ついでにゼロが俺を殺しに来るんだからな。

 もう八方塞がりにもほどがある。ゼロをダンジョンで置き去りにしてからこうなっちまった。こんなことならアイツを飼い慣らして一生こき使ってれば良かったぜ。


 人目につかないよう、隠れて移動する俺の眼前に一人の男が立った。




「よお、デオック。久しぶりだな」




 げげッ!! ゼロ!?



「どうして俺の場所がわかったんだ!?」


「魔剣が教えてくれるからな」


 魔剣の剣身から街の地図が浮かび上がる。青と赤の点滅があり、そこには俺の名前が表示してあっていた。


 ス、スキルか!? 俺の位置が表示してあるぞ!?



「デオック。俺が来た理由はわかっているだろう?」


「へ……へへへ。そりゃあな……。ダ、ダンジョンの件。あ、あれは悪かったと思ってるよ」


「…………預金通帳を返せ」


「へへへ……。ま、まぁ待てよ。お前さんが強かったってことは嫌というほどわかったんだ。どうだい、俺達やり直さないか?」


「はぁ?」


「お前さんが使う魔剣のスキルを使ってよ。もう一度冒険に花を咲かそうぜ!」


「正気か?」


「勿論だ! 仲間をたくさん集めてよ! 冒険の後はみんなでマチェットをやるんだよぉおお。楽しいぜぇええ!!」


「…………」


「お前さん、マチェットが好きだろぉ? 商人が出世するボードゲームさ。今度はイカサマしねぇからよ! みんなで楽しく酒を飲みながらやろうぜぇええええええええ!!」


 ゼロの口角は少し上がる。

 

 お! こりゃ、脈ありか! よぉし、このまま畳み込むぜ!!


「みんなで冒険、みんなでマチェット!! そうだ! 冒険の報酬でお前さんの妹の病気を治そうじゃねぇか!! これでみんなハッピーだぜぇえええええええ!!」


 刹那。剣の振り下ろす音が響く。





ブォオオオンッ!!




 

 同時に衝突音。顔の側面に激痛が走った。




バシィイイイイインッ!!




「アグァッ!!」




 俺は3メートル吹っ飛んだ。



「な、何しやがんだゼロォオオオオ!?」


「虫唾が走る」


「な!?」


「貴様の言葉、全てに虫唾が走ると言ったんだ」


 

 くっ! いい気になりやがって!!



「通帳を返せデオック。峰打ち1万発で許してやる」

 


 い、今の激痛を1万発だと? し、死んじまうぜ!

 通帳を返せば殺されっちまう。でも返さなくても無理矢理取り返すだろう。

 あの魔剣の力が未知数で面と向かって戦うのは不利だ。

 だったら──。


「こんな紙っきれ、いらねぇよ!」


 俺は通帳を放り投げた。

 

 ゼロが生きているなら金は下ろせねぇからな。

 まずは隙を作って逃げるのが肝心だぜ。


 ゼロが通帳を掴んだのと同時。



高速移動眼ターボアイ!!」



 俺の潰れた片目は真っ赤に光る。スキルを使った高速移動。




ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!




 地図のスキルがどれほどの範囲をフォローするのかしんねぇが街を出たなら大丈夫だろうよ。




◇◇◇◇



ーーコルトベルラ高原ーー




 俺はコルトベルラから出た高原へと走り着いた。



「ハァ……ハァ……。こ、ここまでくれば安心だ」


「何が安心なんだ?」


 

 俺の顔に影を落とす。

 見上げると魔剣に乗ったゼロが宙に浮いていた。



「げッ!?」



 ま、魔剣の力か!? 空まで飛べんのかよ!!

 しかも、俺の 高速移動眼ターボアイに追いつくだと!? なんて速さだ!!


 こ、こうなったら、仲間に秘密にしてきた 超高速移動眼スーパーターボアイを使うしかねぇ。 高速移動眼ターボアイの10倍の速度を持ったとっておきのスキルだ。

 人間の動体視力では決して見えない超スピード。へへへ……。このスキルは誰も知らねぇ。知った奴はこの世にいないからな。


 まずは隙を作って機会を見るぜ。


 俺は即座に土下座した。



「すまねぇゼロ!! このとおりだ!! 許してくれぇええええええええ!!」


 ゼロは冷たい視線で俺を見下した。


「謝って許せると思うか?」


 思ってねぇよバカが。貴様を散々利用して、あげく殺そうとしたんだからな。しかも妹を襲う計画まであった。そんな人間を許せる訳がねぇぜ。

 だからよ。許してもらおうなんて微塵も思っちゃいないさ。お前がただ油断してくれりゃあいいんだからよ。


「ゼロすまねぇ!! どうしたら許してくれる!?」


「ダンジョンで叫んでいた、俺の言葉を忘れたのか? 俺は『許さない』と言ったんだ」


「そ、そこをなんとかぁあああああ!!」


 俺は腰に付けていた小斧を握りしめた。

 

 へへへ……俺の動きに気づいてねぇ。


 ゼロは怒りの言葉を口にした。





「 許 さ ん ! 」




 

 バカめ! 油断したのが運の尽きよ!!






超高速移動眼スーパーターボアイ!!」





 勝ったぜ!! 

 このスキルは見てからじゃ対応できない! 絶対に避けることは不可能なんだ!!

 喰らえ! 俺の小斧を!!









「死ねゼロォオオオオオオオオ!!」







 振りかぶった小斧はゼロの眉間を捉えた。

 小斧による渾身の一撃。喰らえば即死である。

 しかし、ゼロはあっさりと避けた。俺の小斧は空を切る。





スカッ!!





「何ィイイイイイイ!? どうしてぇえええええええ!?」




 同時に頬に激痛が走る。



バシィイイイン!!



「痛ぁああぁあああッ!!」


 

 そのまま3メートル吹っ飛ぶ。

 

 ど、どうして!?

 絶対に回避不可能な動きをどうやってかわしたんだ!? 事前に知っていなければできない動きだ!?


 ゼロは剣身を俺に向けた。




「デオックの所持スキルを 鑑定剣ジャッジメントソード




鑑定結果。

名称:デオック・ジャックス。

所持スキル: 高速移動眼ターボアイ 超高速移動眼スーパーターボアイ




 剣身に文字が浮かび上がっている!?

 お、俺の秘密にしていたスキルの名前が載っているぞ!?



「デオック。お前は狡い人間だ。だから、何か、とっておきの技を俺達に隠しているかもしれないと思った。だから事前に調べておいたのさ」



 な、なんなんだこいつのスキルはぁああ!?

 相手の能力を鑑定できるスキルだとぉ!? 

 つ、強すぎるだろ!!



「さぁ、覚悟はできているだろうな。デオック?」



 に、逃げなければぁああああ!!

 こ、殺されるぅうううううううううううううううううううううううううううう!!




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武器:魔剣ラルゥ。


魔剣レベル:12。


魔剣スキル: 炎攻撃剣ファイヤーブレード 水攻撃剣アクアブレード 女人化ガール 鑑定剣ジャッジメントソード 小回復剣リトルライフソード 照明剣フラッシュソード 収納斬ストレイジスラッシュ 地図剣マップソード 風攻撃剣ウインドブレード 刃防御エッジディフェンス 風乗り剣サーフソード 剣印ソードスタンプ


住居:ヒポポダーマの屋敷。


従獣:ヒポポダーマ。


アイテム:金銀財宝多数。


ラルゥの好感度:♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



所持金:800万エーン。


貯金:626万エーン。

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