第5話 水源
「これだな」
さっき吉左に教わった場所には確かに沢があった。
「いやー、これでは厳しいべな」
俺の隣で佐平次が呟く。俺も同意見だ。わずかばかりの清水が流れる沢、言い方を変えればチョロチョロ清水だ。これでは、我が松井村の田に十分な水がいきわたるとは、楽観的な俺でもとても思えなかった。
「もう少し、山側に行ってみよう」
俺達は来た道を引き返し、尾根伝いに山側へと入って行ったのだが、
既に、日も落ち加減だ、死んだばあちゃんが言っていた。夕方は山に入ってはなんねって、
「一旦、帰ろう。また、明日、出直しだ」
俺達はその日の、捜索を打ち切った。
水源探索3日目、
「あったべ!」
弥平が遠くから大声を上げている。
歓喜だ!山に分け入り、彷徨いながら、イノシシに脅されながらやっと見つけた水源候補。
村から10kmほどの山中で、そいつはあった。水はこうこうと絶え間なく流れ、田を潤すには十分な水量、透明にして芳醇。見つけた!
沢というには大きく、川と言っても良いくらいの幅3m、水深50cm、サラサラと涼し気な音を出して、そこだけ木々が無い事もあり、照らし出す陽光が透明な水を透き通らせ、川底の白い砂を輝かし、時折、イワナが逃げるように泳いでいる。
「皆の衆、ご苦労だった。これで、あとはわが村まで引っ張って来るだけだ。高低差も問題あるまい。後は、任せてくれ、お上に取り合ってもらう」
村まで10km以上、高低差200m程、高い、水量豊富。
俺達の大きな第一歩になった。
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