第14話 「葵(凛)」

 あおいが30分後に僕らの席に顔をだした。おしとやかなあいちゃんと交代した。



 「こんばんは。」


 小柄だ。黒髪ロングストレート、優しい笑顔に「あっ」と目が奪われた。笑った時に、きれいな歯並び、ってなんとなく感じる。


 「笑顔が素敵だね。僕は木村です。こいつは吉田ね」


 「ありがとうございます。なんで指名してくださったんですか?」


 「あ。いや。普通に何かいい雰囲気だとおもったから。指名はよくされるでしょう?」


 「いや全然指名は、ないですよ。さっきのお客さんは、たまたま、よく来てくれてる方です」


 「そっか(大知と仲良いのかな。これは聞けないかな。)いまミユちゃんと話してたんだけど、普段おとなしいの?」


 「あっ。スイマセン。人見知りなんです」


 「あ、いやいや、別に。でもそんな風に見えないね。今なんか普通。むしろ社交的なくらいだよ」


 「いや、やっぱ指名されたら頑張んなきゃって思うから」


 「だよね。偉いな」


 「いくつなの?」


 「20はたちです」


 「若い。大人っぽいね」

 

 「ありがとうございます。全然子供ですよ。」いたずらっぽく微笑ほほえむ。


 「いま、仕事は何をしてるの?夜だけ?」


 「いえ。花屋でバイトしてます。」


 「何日くらい?」

 

 「週5日です。」


 「おっ。すごいね。疲れるでしょう」


 「そうですね。やっぱ夜は週3日とか4日までです」


 「あんま無理しないでね。まあね、ここにいる桃介や僕も働き過ぎて嫌にはなったからね」


 「あっ。やっぱそうですよね」


 「桃介な」


 「そうそう。看護師なんかも深夜勤務で大変だからね」


 「あっ。ナースさんなんですか?」


 「ナースです」


 「私、看護師になりたかったんです。小さい時に。介護士もいいかな」


 「おおお。いいね。どんなとこがあれですかね。看護師がいいと思ったんすか?」


 「何かひとの役に立ちたいし、やっぱり自立していきたいので」


 「じゃ、まだ若いしこれから目指せばいいんじゃないですか?」


 「ですよね……お金キャバクラでためて専門行きたいかなあ」


 「看護師の事ならなんでも聞いてください」(桃介)


 「え〜。聞きたいです〜」


 「じゃあライン交換しときますか?」

 (おっ、桃介OKだ。)


 「お願いしま。」二人が交換する。


 「あっ葵ちゃん俺もまぜて」

 僕も交換させてもらう。ラインの名前はrinだった。

 (rinって名前が本当なんかな。)


 「うん。じゃあさ、話し、かえちゃうけど、出身とか葵ちゃんは、どちらなの?」


 僕は情報収集に入る。


 「京都です。」


 「おっ古都だね。京都はいいよね」


 「京都のなんてとこ?」


 「えっと河原町かわらまち


 「かわらまち?かわらちょうではなく?」


 「京都はちょうってあんまないかな。まちかな」


 「お父さん、お母さんは、京都に?」


 「父は亡くなっていて」


 「あっ。ごめんね。悲しい話を思い出させて…お父さんはサラリーマンだったの?」


 「いえ。うちはサラリーマンじゃなくて小さな旅館りょかん?」


 「旅館かあ。京都で、お母さん一人で大変なんじゃない?」


 「今は締めました。お母さんも連絡が取れてなくて……」


 「いやいや、あまり深く詮索しないよ。家族もいろいろあるんだよね」


 「じゃ桃介がナースばなしするからさ」


 「何が聞きたいですか?」


 「えっと、あの学校ってお金どれくらいかかります?」

 話題は桃介と続いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る