第16話 勝ち逃げ(お題「失われたはずの過去からの迎え」より)
びしょ濡れで不揃いの髪
刻まれた着衣
泣き腫らした目……幻?
違う。もう、あの頃の私じゃない。
気づけば屋上で火だるまの女が笑う。
フェンスを越える炎が、背を押したくて堪らない手の様だ。
違う。
私はお前なんかに殺されない。
飛び出した一歩は罪悪感じゃない。
勝ち逃げだ。ばーか。
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