生徒会②
「二人とももしかして知り合いなの、幼馴染とか!?」
柿崎が目をきらつかせながら興味ありげに俺に聞いてくる。
やばい、もし俺が実力を隠していることがばれたら信用問題的にも俺の正体的にもまずいことになる。
「いや、初めてですね」
冷静に真田のキャラをつづけ、素知らぬ顔をする。
「そうなの?」
柿崎は続けて今入ってきた少女に聞く。
先ほど生徒会室に入ってきた少女はいまだに俺の顔を凝視している。
どういいわけすればごまかせるか・・・
俺が脳内をフル回転して言い訳を考えている間にその少女の口が開く。
「す、すいません、知らないです」
「なーんだ、知らないのか」
柿崎は残念そうに肩を落とす。
た、たすかった。
なんでいわなかったのだろうか、あの驚いた顔、間違いなく俺が誰か気づいていたのに。
「よろしく!」
よく言わなかった、おそらく俺の心中を察したのだろう。
俺はうれしさから思い切り手を上げ握手を求める。
「ゆ、許してください!」
そうすると宇佐美は殴られると思ったのか頭を抑え許しを請う。
「ち、違うよ、宇佐美さん、握手握手」
井上が焦ったような口調で俺の行動の誤解を解く。
井上の言葉を聞くと安堵したような様子で抑えている手を下す。
「彼女は宇佐美、生徒会の書記を担当してもらってる」
「よ、よろしくです」
宇佐美はびくびくしながら頭を下げる。
相変わらずの弱キャラっぷりだ。
「話をもどすが、俺は使えない奴を入れたくねえ」
直江はまるでゴミを見るような目つきで俺に嫌悪感むき出しで言ってくる。
「だがそれじゃあ納得しない連中がいるみたいだしな」
直江は井上と唯に視線を送った後また俺の前に立つ。
「俺と勝負しろ、勝ったら入れてやるよ」
結局戦わなきゃいけないみたいだ。
「な、君と戦って勝つなんてそんな無茶だ!もっと他に」
井上は必至に直江の要求を止めようとする。
「ああ、いいよ」
俺が二つ返事にそういうと直江はニッと笑う。
「いい返事できんじゃねえか」
「真田君、直江の実力はこの学園でもトップクラス、この生徒会の中でも会長を抜けば最強、武田家の【四天】にだって敵うレベルだ、勝てるわけないよ!」
「やっぱり強いんだ」
こいつがかなりの実力者なのは自信や雰囲気からもわかる。
「そう、だからやめなきゃ」
「だから条件付きでやらしてほしい」
「真田くん・・・」
井上は心配そうな顔で俺を見つめる。
「10分直江君が僕をダウンさせなきゃ僕の勝ち、どうかな、最強の直江くん相手なら十分なハンデだと思うんだけど」
煽り気味に笑顔で直江に問いかける。
井上や柿崎はその態度に目を丸くして驚いている。
この条件なら直江を倒して俺が有名になって周囲からの注目を浴びる、なんてこともないはずだ。
「いや3分でいいぜ、10分もやったら死んじまうかもだからな」
直江は鼻で俺の態度を笑うとその余裕を崩さず、顔を近づけてくる。
大層な自信だがそれにお前は足をすくわれることになるぜ。
直江はスマホの時計を見る。
「じゃさっそく始めるぜ」
は?今?ここで?
ブオッッ
「速っ―――――――――――」
かまえる暇も許さず、懐に潜り込んでくる。
近接タイプなのはわかっていたが、とんでもなく速い・・・!
鍛えられた身体能力系のシックを使っている。
ブンッッ
俺の顔面の寸前を直江の腕が通り過ぎる。
「反射神経は悪くない、まぁこれくらい避けてもらわなきゃな」
とんでもない、大振りのパンチ、もう少しコンパクトに殴られていれば間違いなくあたっていた。
わざと大振りにしてあたるか試したんだ、こんなのにあたるようなら生徒会にはいらないってことだろう。
こいつは、俺の面倒な遠距離攻撃はない分やりやすい、この勝負、耐えれば俺の勝ちなんだ、すべて避けてよけれなそうな攻撃は防御で受けきってやる。
「ほらほらどうした反撃しないのか?」
ブンッブンッ
直江の激しい攻撃は機関銃のように休む暇もなく打ち尽くされる。
俺はそれを全て読み切りぎりぎりの戦いを演出するためすんでのところで躱しつづける。
「ずっと逃げられると思うなよ」
ガシッ
「うおっ」
「捕まえたぜ」
直江は左手で逃げられないように胸ぐらをつかみ右腕を振り上げる。
俺は左腕を上げ、その攻撃を防御する。
ダンッッ
殴られた瞬間、あまりの威力に後ろに引く。
打たれたところは赤く腫れている。
こいつ、たいして身長ないくせにとんでもない威力で打ってきやがる。
シュッ
一度大きく後退り教室備え付けの時計を見る。
よし、一分たった、この調子なら十分いける。
俺が時計に視線を向けたのを見て直江もその時計を見る。
「俺の攻撃を1分も躱し続けるなんてな、並みの集中力と身体能力じゃできない、そこはほめてやるよ」
「ありがとう」
「だが、そろそろ限界だろ」
直江は俺を見透かしたようなことを言う。
「ばれてた?」
「俺が動かすのは腕と腰だけ、お前は体全体を使って避けてんだからな」
確かに俺のほうが疲労がたまっているのは確かだ、だがもしよけれなくてもある程度なら防御できる、この攻撃のままなら十分耐えられる。
「それじゃ次の段階行くぜ」
こいつまだ本気じゃなかったのかよ。
「【獣化】!」
直江がそう言うと右腕に剛毛が生え、巨大化する、その腕と拳は先ほどの四倍ほどのでかさになった。
獣化のシック、身体能力にその獣の能力を上乗せするシック。
こりゃなんだ?ゴリラ?体の比重おかしいだろ・・・
「フン!」
真壁の発達したでかい腕が異様な速さで近づいてくる。
だめだ、速すぎる!
その攻撃に気づいたときには最早時すでに遅し、あまりに速くでかい攻撃は先ほどまで寸ででよけていた俺にはよけきれなかった、急いで腕を攻撃される部分にクロスさせ全力で防御する。
バゴォォォ
威力は後ずさるだけにとどまらず俺の体は後ろの壁まで吹き飛ぶ。
「かはっ・・・」
食らった攻撃は防御したというのにも関わらず貫通して腹にダメージが入っているのがわかる。
凄まじい威力だ、一撃のパワーなら俺や真壁より強い。
なんとかしりもちはつかずにダウンはしていない。
「俺のシックを含んだ攻撃をを耐えきれた奴は【四天】のやつら以外いねえ、うまく防御したみたいだがその防御した腕もはれ上がって相当痛むだろ、お前はゲームみたいにある程度の攻撃を体力で受けようとしたんだろうが、そんなのは無理なんだよ、ダメージを食らえば、そこが痛んで集中力や神経が乱れる、オタクのお前にもわかりやすく説明すると、体力が10あったとして威力が1それは体力が1減るだけじゃねーってわけだ、もうお前は俺の攻撃を避けれねえよ」
直江はソファに座り尊大な態度をとる。
「こういうことだ、所詮シックも使えない奴に生徒会は無理な話だったってわけ」
戦いを見ていた唯は目つきを変え、ギターケースから木刀を念力で出す。
「私がやる、あんたギタギタにしてあげるよ」
「へぇ、女を殴るのは気が引けるがくるんじゃしかたねえなぁ」
直江はコキコキと首を鳴らし、ソファの後ろの唯を見あげる。
その舐めた態度は唯の怒りに油を注ぐ。
「こい、あまてら」
唯が攻撃を仕掛けようとした瞬間攻撃を遮るように大きい声で叫ぶ。
「2分!」
「あ?」
叫ぶと同時に唯の刀が止まり、俺に視線が集まる。
「君のシック耐えられた奴【四天】以外いないんだっけ、そのリストに僕も今日から追加しといてよ」
「んだと?」
「それとぉ、一分で僕の勝ちだけど大丈夫?」
腕を自由に動かせるのを示すように腕を上にあげ大きく微笑み挑発する。
俺の腕はもう、ゆっくり上げたりするのが限界だ、次あの攻撃は防御したら骨が砕けちまう、だがこいつの一撃卜伝から受けた攻撃と比べれば、屁でもねえ。
俺の言葉を聞いた直江は先ほどまでの直江の余裕の笑顔は消え、怒りの形相が浮かび上がっていた。
ガキが、少し煽っただけで動揺しやがって。
「肉ってのはよくたたいた方がうまくなるもんなぁ、よおくたたいて食い殺してやるよ」
ブオッッッ
「死ねぇ!」
直江は先ほど同様恐ろしいほどの速度で踏み込んでくる。
角度攻撃してくるところは同じ、上半身の全体を狙ったパンチ、横にはよけられない。
シュッッ
体をのけぞって直江の最大の攻撃を避ける。
「避けられることなんて読んでんだよ!」
直江は上半身への攻撃を足でとめ、腰を回しのけぞった俺の体に上から右腕を振り下ろそうとする。
ボゴッッッ
「!?」
しかし直江の狙いは大きく外れ、体は吹き飛ぶ。
体をねじってのけぞった状態からの顔面への蹴り上げ、直江の体は生徒会長の机まで吹き飛んだ。
ギリギリ反応がなんとか間に合った、本当に危なかった、戦いをするごとに、自分が強くなっているのがわかる、今のができたのもきっと卜伝戦で得た戦闘経験のおかげだろう。
「すごい!真田君!」
井上は俺の反撃が通ったのを見て歓喜している。
柿崎や宇佐美も信じられないと言った顔だ。
2分30秒、嫌なバイトしてるときみたいな時間の進み方しやがるな、クッソ遅く感じるぜ。
直江は立ち上がり一度周りを見渡す、何かを見たと思うと直江は静かに怒り始める。
「許さねえ・・・」
41、42、43、44、45
「よくも恥をかかせやがったな・・・」
46、47、48、49、50
速く、速く時間たちやがれ・・・!
「お前にも代償を払ってもらうぞ」
直江の目はギンギンに見開かれている。
51、52、53、54、55
直江の三度目の踏み込み、前回よりもさらに速い。
時計を横目に右足をさげ左足を前に蹴りの構えをとる。
やるしかない、こい、もう一度蹴り上げてやる。
「オラァ!」
「ここだ!」
直江の右腕と俺の右足がどちらがあたるかその勝負の刹那、肩を掴まれ知らない声が聞こえる。
「
その声が聞こえたかと思うと俺と直江の位置が入れ替わる。
「「!?」」
直江はその威力を消せずソファにぶつかり、俺の蹴りは空を蹴る。
「はぁ、喧嘩はやめろってなんかいもいってるだろ」
俺と直江の間にはこの学園の紋章のバッジを付けた茶髪の男が立っていた。
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