ぶっ潰そうぜ
と言っても俺がこいつに勝つことは変わらないし、変わらせない。
「大丈夫だ、てめえと友達になるのは、てめえをぶん殴った後だぁ!」
前回同様速攻で踏み切った。真壁はぎりぎりの距離までパンチをためている。避けてカウンターを打つつもりだろう、だったらそれも読んで俺もカウンターか?いや、あいつの【超感覚】は俺が見てきた中でも最高峰、避けるのはよまれて角度をまげられて終わり、つまり俺が先に打つしかない!
(お前は、速いそれだけに単純、最高速度を出してからはその速度でただただまっすぐ進んでくる、しかも筋肉の動きを見るにそれが最高速、そんな動きで【超感覚】を極めた俺を出し抜くことができるわけない)
「とか思ってんだろなあ!」
「なっ、速?!」
ドガァッッ
俺の渾身の右ストレートが真壁の顔面に直撃する。
「クッ・・・」
真壁は予想外のパンチを食らいよろけて後退する。
「逃がすかよ」
後退する真壁に近づき真壁の顔に目線をやる。
それをみた真壁はすぐに顔をガードしようと腕を上げる。
「こっちだよ!」
腰の入ったボディーブローが真壁の防御ががら空きの腹に突き刺さる。
「カハッッ・・・」
真壁は、痛みのあまり大きく屈む。
「ようやく殴りやすい位置になったなぁ!」
ボゴオッッッ
体重をかけた右ストレートが真壁の頭上から炸裂する。
真壁は上からの渾身の一撃により完全に姿勢が崩れ落ちる。
真壁は自分の受けたダメージに驚き目を大きく見開き驚いている。
俺も学生でここまで鍛え上げているお前に驚きだよ。
「おいおいこんなもんかよ」
嫌味たらしく地べたに手を置く真壁に聞く。
「んだと?」
それを聞いた真壁は、まだやれるといわんばかりにたちあがる。
「痛えなぁ・・・いきなり速度をあげ敵の動体視力を麻痺させる。こんな初歩の技を俺が食らうなんてな、お前本気を隠してたのか、俺でも見切れないなんてな、どうやったんだ、それ?」
急な速度な上昇の手品は至って簡単、念力だ、念力はまず自分の操りたいものを感じる、感じた後にそれを操る。それを自分の右肩に施し一瞬のスピードを増したのだ。
「てめえをボコした後にゆっくり教えてやるよ」
真壁の闘争心を煽る。
クッソ楽しいぜ、なんだこの感じ・・・強敵をボコボコにするこの感覚たまんねぇ・・・久しぶりにめちゃくちゃあつくなってきたぜ。
「お前そうとうやってきてんな?久しぶりだぜ、ここまで燃える
真壁は俺の発言を聞き笑みを浮かべた、目をキラキラしさせ俺を見ている。そうかこいつも戦いを楽しむタイプだ、それもこういう最高にくそみそのやつを。
「楽しもうぜぇ!社会のごみ同士!」
「調子乗んなよ次は絶対当ててやる、半殺しにしてやるよ!」
真壁はまたパンチをためている、一回で決める気で打ったパンチだ、当たりどこもしっかり脳震盪にできる顎にクリーンヒットさせた、威勢のいいことを言ったが、この渾身の動きに耐えるなんてやっぱり強い。最高に楽しいなこういう殴り合いは・・・!次で落とす!
俺が踏み切ろうとした、その時何かが俺と真壁の間に入る。
「やめてください!」
そこに出てきたのは学ランをを着た中学生だった。短髪でズボンをはいてボーイッシュ、一瞬美少年のように見えるがしっかりとした女の子のようだ。
「伊織、、、なんでこんなとこに、、」
「兄さんの帰りが遅いから見に来たんだ!喧嘩をやめる約束をしたじゃないか、何度破るつもりなんだ!本当にすいません兄がご迷惑を!」
戦闘を中断できて安堵した。彼女はすごい喧騒で怒っている、すごい生真面目な子なんだろう、とても兄には似つかない、性格も顔も正反対の兄妹。俺はそれを見てつい笑顔になってしまった。
一通り妹に説教されたあと、何とか真壁と話せた。学校ではライオンみたいなやつが妹の前ではまるで子犬みたいにしている。それを見ると見た目のような悪い人間ではないように思える。
「恥ずかしいところみられちまったな、これ謝罪のジュースだ、妹がいることクラスのやつらとかには言わないようにしてくれないか」
真壁は俺が腰かけていた公園のベンチに座りながら話す。
ようやく真壁に話を聞く機会が回ってきた。これを逃すわけにはいかない。
「それにしてもお前あんな強さを隠してたんだな、どうやって鍛えたんだ?」
「そ、そりゃ毎日格闘技の練習だよなぁ」
「本当か?ありゃ一か月二か月で得た強さとは思えないけどなぁ」
「そんなことより、お前こそなんでそんな強いのに武田に従ってるんだ?」
慌てて論点をずらす。
こいつ頭悪そうな見た目なのにとんでもなく鋭い勘してやがる。
「俺だって従いたくて従ってんじゃない、仕方なくだ、あいつが出てきた二年のころだ、あいつは俺を暴力で従わせるのは難しいと見たのか、俺の弱点を探してきたんだ」
「もしかしてそれが?」
真壁は下にうつむき、険しい顔で武田の舎弟になった時の話をし始める。
~~一年前~~
「妹さん、元気してるかな?」
「武田お前、、、手を出したら殺す」
「そんな、怒るなんてよっぽど妹さんが大事なんだ、手なんて出さないよ、まさかね、あと真壁君、お金に困ってるんじゃないか?妹さんの入学金とかいろいろ大変だよね、どうかな、僕の事業を手伝ってくれたら、君たちのこと助けてあげられるかもしれないね」
~~~
真壁は目を大きく見開き悔しそうにこぶしを握る。
綾瀬に聞いた通り武田はかなりの知恵もののようだ。
「そうだ、俺の妹だ、むかつくよな俺が守ってやってんのによ、でもあれでもたった一人の家族なんだ、伊織は天才で、俺より頭が働くし学もある、絶対に俺が守ってやんなきゃいけねえ、あとこの話は妹にはいわないでくれな、知ったらきっと傷ついちまう」
俺はもう家族とは絶縁状態、ずっと一人で暮らしてきた。真壁の気持ちもわからなくもない、大切なものは一回なくして初めて知るんだ、いつだって。
「たった一人の家族?」
俺が聞くと真壁は一度うつむいた後口を開く。
「・・・十字架事件だ」
「【重症化】が生んだ事件だな」
重症化とは極度のストレス、そしてシックの才能が混ざりあいできる現象。重症化したものはシックの限界を超える力が引き出されると同時に暴発し、理性が飛び獣のようになり、無差別に攻撃し始める。
そしてそのペーシェントのことを【重症患者】と呼ぶ。その危険性から今のところ重症患者となったものは問答無用で処刑命令が出されている。
そして重症患者の処理、処刑は暗部の主要な仕事でもある。
その重症患者が起こしたのが十字架事件、10年前におこった大規模殺人事件だ。【七色】の一人元暗部【萌葱の十字架】が重症患者となり処分を逃れるため起こした事件とされている、【萌葱の十字架】は【重症化】をコントロールし処理するため出動した数々の暗部が返り討ちにあった。暗部以外の被害者を含め約100人もの人がこの事件の犠牲者になっている。
俺と真壁は話し込んだ、戦闘スタイルや現在親のいない境遇など似ていることが多かったからだろうか、つい30分ほど話し込んでしまった。
「はー面白かった、お前人生楽しそうだなあ、俺もお前みたいにもう少し気楽に行きたいよ、潰れねーかなあのグループ」
真壁はジュースの缶をゴミ箱に思い切り投げる。
話してみるとどうやら真壁は武田家をよく思っていないらしい。
切り出すなら今だな。
「昔就職、、じゃなくてバイトをしようとしていた時、なんかのセミナーでも言ってたよ、本当にできる人はピンチをチャンスに変えちゃうんだよね!君も始めよう、友達を入会させるだけで儲かるビジネス!ってな」
俺の言葉を聞いた真壁の頭にははてなが浮かんでいた。
「お前にピンチをチャンスに変える策を教えてやる」
「へっ、何言ってんだ」
パチンッ
指を鳴らし真壁を指さす。
「武田達を裏切れ」
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