第8話 ドンキとドンキーは違う店
3人で近くのファミレスに入る。
ウチはハンバーグランチの特大プレート。
龍崎はミートスパで、アンナはチーズケーキ。
全員ドリンクバー付き。
「安藤、あんたホント遠慮無いわねえ」
「ウチがアンタに遠慮する謂われはないし」
「アンナも遠慮することないんだよ。バケツパフェとかどうよ。龍崎のおごりで」
「僕はあまりおなかすいてないから」
「それじゃあウチ、デザート頼んでも良い?」
「良い分けないでしょう。岡部さんのために来たんだから」
「龍崎さんも、僕の事アンナでいいよ。龍崎さんが意味を教えてくれたんだから」
「じゃあ、私も花梨で良いよ」
「よし、じゃあ花梨のおごりで乾杯だし」
「安藤、お前は呼ぶな。ハートのサングラスする奴の同類に見られたくないから」
「オマ、それ言うなし」
「でも、花梨は知識が豊富だね。前世の縁かなあ」
多分、龍崎は今日のためにいろいろ調べて詰め込んできたんだろうな。
口うるさいけど面倒見良いからな。
「えっと、ホラ私ワーグナーとか好きだから北欧神話も読んだことあるから」
「やるじゃん。龍崎。サス龍」
「何それ?」
「伊達に学年8位じゃないなって。上に4組の春風とカッチンがいるけど」
「褒めるなら素直に褒めなさいよ。あんた、一々当て擦り言わなきゃ気が済まないの?」
龍崎は傍若無人なところもあるけどマア良いやつだよな。
一学期ぶっ飛んだ行動がひどくてクラスで浮いて不登校になった西爪君のところにも青山君と一緒に通ってるようだし。
まあ、このケースは青山君の方が本命かもだろうけどな。
青山君も西爪君の事にかこつけて龍崎にからめとられるんだろうなぁ。
ウチも遠回しに脅迫されたし、弱みいっぱい握られたし、面倒事おしつけられてるし。
陰険で、傲慢で、強引で、身勝手で、尊大で憎たらしいけれどマア良いやつだ。
だんだん腹が立ってきたけれど、この悪事すべてをランチ一回で水に流せるくらいには良いやつだ。
アレ?こいつ本当にいいやつなのか。
「ねえ安藤。あんた、すっごく失礼なこと考えていない?」
「イイエ、ナニも」
絡まれないうちにトットと話題を切り替えよう。
「ねえアンナ。時間取らせないからこの後ちょっとショッピングつき合ってよ」
「いいけど、どこに行くの?」
「ちょっと、そこのドンキに」
「あんたまだ食べるの? 特大ハンバーグ食べてこの上またドンキーって、どこまでハンバーグ好きなの。ホント、ビックリだわ」
「”びっくり”じゃないわ! ドン・キ〇ーテで幸せ、ゲットだぜ」
「・・・ピーチにサトシ混じってますよ」
アハハハ、アンナも少し馴染んできたかな。
「何の話か分からないけど、これ以上ここに居たら安藤に破産させられるからもう出ましょう」
そう言うと龍崎はそそくさとレシートを持ってレジに向かった。
そしてうちら三人は筋向いのドン・キ〇ーテに入った。
しばらく三人で店内をうろうろしてお菓子とかコロンなんかのコスメ製品とかをカゴに放り込んだ後、ウチはコスメの棚の隣にあった目的のものを選んでレジに向かった。
「安藤、何買ったの?」
アンナもチラチラ見てる。
レジを出るとレジ袋をアンナに押し付けた。
「買い物つき合ってくれたお礼」
「エッ、何ですか?!」
レジ袋の中から中身を取り出したウチは、淡いピンクのリップティントと黒のカラコンをアンナに渡す。
「リップティントとカラコン。お揃いだよ」
「エッ、でも僕は何も…」
「ほら、ウチらこんな眼じゃあ学校行き辛いジャン。だから友達同士お揃いって事で」
アンナは少し涙目で顔を真っ赤にして袋を受け取ってくれた。
「アリガトウ」
消えそうな声でウチに言う。
「それじゃあウチら帰るけど、月曜日に学校で会おうね」
「ウン、必ず行くから」
アンナは少し恥ずかしそうに、それでもしっかりした声でウチらにそう告げると小走りに家に帰っていった。
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