第5話 クロックワールド『ロスト』



 夢の中で 彷徨ってる 私

 ここにあるのは

 思い出せない昔の事と

 今までの事 これからの事


 みんなみんな 優しくて 温かくて

 心の中 過ぎ去っていく


「でも…」


 友達だった誰か

 大好きだった人

 積み上げて来た思い出

 心に刻んだ記憶


 紡ぎ続けて来た 時の世界が

 止まって 壊れて 欠けて

 剥がれていった


「嘘つき」





――それはそれは禁じられた時の世界の話

――それらは皆偽物でした 虚飾でした

――その物語に厚みなんてなくて 存在感もなくて

――与えられたのは ただの幻


――転がり落ちる坂の中 人のサガ 救い求めて

――捜しても捜しても 見つからないばかり


――気づいてはいけなかった 見つけてはいけなかった


――残酷な時の物語





 人形だらけの 誰もいない町

 作りこまれた ドールハウス

 決められていた シナリオと結末

 それは それは

 私の為の物語

 なんかじゃない


 君が大切だっていう言葉

 笑ってほしいっていう気持ちも

 幸せでいてほしい 楽しんでほしい


 私の為に?

 違うよ

 貴方の為だよね


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