三人目 肉好き悪魔は育てた野菜も好む その二
ネット記事に書かれている内容は、
「『都内在住の大学二年生の鈴宮奈緒美さん十九歳、会社員の橋本亮太さん二十歳の二名が行方知れずとのこと。所持品や貴重品など自宅に置かれたまま、家族や友人など二人の行方が分からないと。警察は何かしらの事件や事故に巻き込まれた可能性があると捜査している。二人の関係性についてはまだ明かされていない』だそうよ~」
アスモデウスが読み上げる。
二人の名前やその他諸々を上げてまで捜査に出たのか。本当にこういう時だけは行動が早いな警察ってやつは。
そこへ、インターホンが鳴る。グレモリーが僕の代わりに出てくれた。
しばらくして、グレモリーが戻ってくる。
「主……」
「ん? どうした?」
視線は玄関へ向け警戒状態のグレモリー。それだけで、僕の中で嫌な予感がする。
「例の刑事が主に聞きたいことがあるとのことです」
「やっぱりか……」
このタイミングで。やはり疑われているな。
杖をつきながら玄関へ向かうと、もう一人あの刑事のそばに男が立っていた。
「やあ、大磨くん。突然、訪問して悪いね」
「何か用ですか?」
もう一人、どこかで……。
……あっ。あの事故の時、事情聴取にこの刑事と一緒にいた奴だ。墓参りの時は一人だったが、今回は二人で僕の下へ来たわけか。
「手短に。彼のことを知っているかい?」
橋本刑事が一枚の写真を見せる。自身の息子、橋本亮太の写真だ。
「いえ。知りませんが」
「じゃあ、十月三日。大磨くんはどこで何をしていたか聞かせてもらえないかな」
アリバイか。
それなら問題ない。すでに手は打ってある。
「その日は、朝から家のメイドと一緒に買物とカフェに行ってましたよ」
「どこのカフェかな」
その日のこと、行った店の名前を言うともう一人の刑事が確認のため家を出て行く。
十月三日、その日に橋本亮太は消息を絶っているものな。さやか、という女とデートして。
「いやー、ごめんね。こう何度も刑事がお邪魔して」
「いえ。それが仕事ですもんね」
「あはは。もうちょっと待ってね。今、大磨くんのアリバイを確かめているから。これが終わればすぐ帰るよ」
それから、もう一人の刑事からスマホに連絡がきたのか橋本刑事は電話に出ながら、
「そうか。分かった。ご苦労。うん、大磨くんの証言通りのようだ。お邪魔したね」
電話を終えそう言って出て行く。
デートの尾行と同時にアリバイ工作もしておいて良かった。
グレモリーがそばまで来ると支えてくれる。
「主、お疲れでしょう。私に寄りかかってください。それと……」
「まだ何かあるのか?」
「はい。あの刑事はまだ主を疑っています。今も、家の近くでこちらを伺っています」
しつこい刑事だな。一つ、アリバイがあったとしても完全には疑いが晴れるわけではないか。次の復讐には、前回のよなアリバイではなく彼らを利用した工作を考える必要があるかもしれない。
しばらく見張りがつくなこの様子では。
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