二人目 色欲の悪魔は欲を満たして最後は喰らう その三
橋本亮太に接触を図り数日。アスモデウスは、彼のアカウントとメールのやり取りが始まった。
「あらあら~」
と画面を見ながら笑みを作り、
「そうなのね~」
と楽しげに呟き、
「お姉さんと合いそうね~」
などとやり取りが進む。
どうやら最初は他愛のない会話から始まり、徐々に何が好きで趣味は何か、休日の過ごし方から普段は何をしているのかというやり取りをメールでしている様子。
「こういうのは、警戒心を抱かせないよう他愛のない会話から始めて趣味が合う、好きな料理が同じ、相手に好感を持たせるのが大事なのよ~」
アスモデウス曰く、嘘から共通点を作り出し実際に会ってみたいと思わせるのだと。
正直、僕にはそこまではできない。相手に全て合わせるなど、無理に決まっている。まあ、アスモデウスが楽しそうにしているのなら僕がわざわざ口を挟む必要もないか。
そうして、アスモデウスの目論見通り実際に会う約束を取りつけるまで進展する。
傍から見て、案外あの男は単純なのではと思ってしまう。
後日、アスモデウスは橋本とのデートのため人間に化ける。そのあとを僕と、護衛兼監視の目的にグレモリーが尾行することに。
「目的を忘れていないかどうか、監視する必要があります」
「大丈夫だろ。そこまでのめり込むってことは」
「いえ、主。アスモデウスは、自分の欲求にはとことんのめり込みその上で頂くものは頂くのが彼女なのです。なので、主の復讐を忘れてあの男の精魂を吸い尽くす可能性も十分あり得るのです」
「……それは困るな」
「はい。ですから、監視のため尾行すべきです」
「忘れるなよ、アスモデウス」
グレモリーの話に不安が大きくなる。
待ち合わせは駅前の時計台の下。
人間に化ける時にアスモデウスは、橋本好みの女に化けるとか言っていたが。あれがそうなのか?
白のワンピースに薄水色のリボンで腰を引き締め、黒髪の清楚でお淑やかさのお嬢様系を演じるアスモデウス。
実際この目で橋本亮太を見て、正直な感想としてファッションや見た目を気にする青年。確かに爽やかな笑顔を浮かべるが、僕から見ればどこにでもいる社会人だ。
しかし、その裏の顔を知っている分、見方は変わるが。
合流した二人はカフェへと入店。そこで会話をするが、会話内容の全てが聞こえるわけではないので、何を話しているのかは分からない。だが、
「そうなのですね」
「わたくしも趣味が合う殿方とお会いできる今日が楽しみでしたの」
「お優しそうなお方で、楽しい一日になりそうですわね」
と、普段とはまったく違うアスモデウスに僕は驚くことばかり。口調も、姿も。
これも欲を求め、与える悪魔の力の一部なんだなと関心してしまう。
そして、心底このデートを楽しんでいるアスモデウスの姿に僕とグレモリーは本当の目的を忘れていないかと本気で心配になる。
「やはり、アスモデウス。目的を忘れていませんか? どう見ても、デートを楽しむ女にしか見えませんよ」
「グレモリーもそう思うか? 僕も、そうとしか見えないんだが……」
「どうしましょうか、主? 念話なり何かで、アスモデウスに忠告をすることも可能ですが」
「うーん、どうしたもんか……」
念話なんてできるのか。便利そうだなそれ。とはいえ、任せると言った以上はここで手を出さない方がいいのか。
…………うん。少し考えた結果、
「ここはアスモデウスに任せる。忘れてはいないと信じよう」
「よろしのですか?」
「ああ。アスモデウスも、アスモデウスなりに何か考えや作戦があるのかもしれないしな」
「私には、そのようには思えないのですが……。むしろ、人間のフリを楽しんでいるようにしか……」
いや、まあ……。僕もそれは思うが……。
あっ、カフェから動き出した。
どうやら、映画の上映時間をカフェで待っていたのか。
二人は、映画館に入り二時間後に出てくる。僕とグレモリーは、カフェで休憩しつつ出てくるのを待っていた。
その間に頼んでケーキと紅茶を楽しむ。
一回目のデートはカフェと映画で終わりのようだ。連絡先を交換し、待ち合わせをしていた駅前の時計台の下で別れる二人。
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