第六話 運命の2人
(第一話~第五話を改稿しましたので、まずはそちらからお読み下さい。)
「やあ、また会えたね!」
「そうだね。」
それはリリアだった。リリアの後方にいた、彼女の友達グループがざわつきだす。
「えっ、あの子って『第二の秀才』くんかしら?」
「絶対そうだよ。だってマント付けてるし、フードも被ってるし。」
「確かさ、リリアって『第二の秀才』くんに会いたがってたよね?」
「そうだ!今朝、リリアちゃん、彼に会ってた!」
「『天才』と『秀才』が出会う時、2人は運命の恋に……的な感じかしら?」
「わー!それいいね!」
何がいいのだろうか。
「あー、こらこら。静かにねー。ちょっと彼と話したいことがあるから、先に試験の日程を確認しておいで、終わったら行くから。」
「えー。私もあの子と話してみたいわ。そしたら、リリアから奪えるかもしれないのに…ね?」
「人のモノを奪ってはいけないし、そもそも彼は私のモノじゃないから!ほらほら、先行って。」
「まあいいわ。じゃあ、あとで。あっ、秀才くん、リリアとのデート楽しんでね。」
「ちょっと!」
「あはは……。」
僕は苦笑いするしかなかった。
ざわつく集団をリリアが優しく制し、彼女の友人たちを試験の日程が書かれている掲示板へと促した。
こちらを向いたリリアは苦笑いしながら言った。
「あはははは。ごめんね。」
「いや、大丈夫。」
「んー、ここで話すのもなんだし、私たちは室内の休憩スペースに行こ?」
「いいよ。」
僕たちはギルドメインセンターに入り、3階にある休憩スペースの空いている席に座った。休憩スペースには数人しかいなかったので、周りの視線などは気にならなかった。
「ごめんねー。友達がうるさくて。ああいうの、あんまり好きじゃないよね?」
「まあ……。でも、大丈夫。」
「なら良かった。じゃあ、本題に移るね。カイに聞きたいことがあったの。」
「聞きたいこと?」
「そう。あのさ、カイの精霊について聞きたいんだけど……いいかな?」
まあ聞きたいことがあると言われた時点で、精霊のことだろうなとは思っていた。別に断る理由がないので了承した。
「うん、いいよ。」
「ありがとう。」
リリアは感謝の意を述べると続いてこう言った。
「私さ、さっき精霊授与の儀式が終わったの。それで終わった後に王様から言われたの。すごい光だったって。そして、こうも言われたの。あなたと同じくらい光っていた人がいたよ、ってね。精霊鑑定の時もギルドメンバーの人から王様と同じようなこと言われた。それってさ……カイのことかな?」
「まあ……そうだと思う。」
「やっぱり!そうだったんだね!」
リリアもあんな光だったのか。じゃあ、リリアは風神と同じくらいの精霊を授与されたのか。それは一体……。
リリアは右手の小指についている指輪を触りながら、こんな提案をする。
「じゃあ……今からさ、精霊について互いに教え合わない?」
「いいよ。」
「じゃあさ、まずは上位精霊ではあるよね?」
「うん。」
「次に武装状態の武器は?」
「弓。リリアは?」
「剣だよ。へえ、弓なんだ。なんかお似合いだね!」
「ありがとう。リリアもね。」
「え!ありがとう。すごい嬉しい。」
照れているのかリリアの顔が少し赤くなった。その後、いやいや待て待て、と自分自身に言い聞かせるように小声で言って、僕に質問を続けた。
「1番聞きたいのはこれだね。精霊は何?」
「リリアから言ってほしい。」
なんとなく先に聞きたかった。
「……え?ああ、オッケー。」
と言うと、リリアは右手の小指にある指輪を見せながらこう言った。
「私の精霊はね……雷神。」
――え?ライジン?ライジンって、あの雷神?僕の風神と対になる存在のあの雷神?聞き間違いじゃないよな……。
「って、おーい?カイー?」
リリアが僕の顔の前で右手を振っていた。
「あっ!ごめん。」
「大丈夫?カイの番だけどいいかな?」
「ああ、そうだったね。僕の精霊は……風神だよ。」
「……えっ?フージン?……ええええ!!」
驚きのあまりリリアは大声を出した。と同時に休憩スペースにいた数人がこちらの席をバッと見た。リリアは周りの人たちに「すいません。ごめんなさい。」と両手に手を合わせながら言った。その後、こちらに向き直った。
「えっ、いや、本当にびっくりしたよ。」
「僕もリリアが雷神って言った時、びっくりしてた。」
「だから、ぼーっとしてたんだね。」
「そう。」
「いやあ、これはまさにうんめ……あっ、いや、何でもない。」
多分、先程リリアの友達が「運命の恋」という発言をして、それが頭によぎったので、運命と言うのを躊躇ったのだろう。ちょっと気まずくなり、少し沈黙が流れる。ここはちょっと勇気を出して、こちらから話そう。
「まあ、でも、すごいよね。」
「そ、そうだよね!あっ、まだ時間ある?」
「うん。」
「じゃあさ、申し訳ないけど、私、一旦掲示板を見てきてもいいかな?その後にもう一つ話したいことがあるの。」
「うん、わかった。」
「じゃあ、ここで待ってて。行ってくる!」
そう言って、リリアは席を離れていった。
――約5分後。
リリアが席に戻ってきた。右手には何かが書かれた紙を持っている。
「お待たせ。」
「うん。その右手のやつは何?」
リリアは椅子に座りながら、僕の質問に答える。
「これ?これは試験日程が書かれた紙だよ。ここの1階にこれを渡しているギルドメンバーがいるから、言えば貰えるよ。」
「へえ、知らなかった。」
「私のついさっき知ったの。友達が教えてくれて。」
掲示板とかに「1階で配ってます」とか一言書いてくれれば分かりやすいのにな。まあいいや、試験日程覚えてるけど、あとで貰って帰ることにしよう。それより――。
「で、もう一つ話したいことって?」
「あっ、そうそう。あのさ……明日からの自己強化期間で修行するわけじゃん?」
「うん。」
「……私と一緒に修行しませんか?」
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