第28話 カミングアウト
そろそろ9時だな…。けいちゃんまだ来ない…。渋滞の他にも何かあったんじゃないかと不安になってきた。
「いやー仕事楽しいなー」
「先輩ニッコニコっすね」
「だってボク今部長の席に座ってんだよ?最高なんだもん」
「というかよくパスワード分かりましたね…」
「え、部長の誕生日入れたら一発でいけたけど」
けいちゃん…そういう所昔から変わってないな…。昔から4桁の数字入れるやつは誕生日入れてたから。
その時、社内の扉が勢いよく開いた。
「はぁ、はぁ…、す、すいません遅れて…」
「あー!部長来た!」
やっとけいちゃん来た!何だろうこの圧倒的安心感。実家に勝るわこれ。
「部長、大丈夫でした?」
「いやー心配しましたよ部長ー」
永太と高瀬奈先輩が言う。いや、本当に安心した、これで来なかったら俺仕事放り投げてけいちゃんのこと探しに行くつもりでいたから…。
「あ、部長。ゆっくりしてもらっていいですよ」
「え、何で?」
「今日はボクが一日部長なので」
「何言ってんの高瀬奈くん…」
「えーボクがやりたいのにー」
「まだ言ってる…諦めて下さいよ」
どうやら先輩は本気で今日部長としていたかったらしい…。何か永太が先輩の相手してるのなんか新鮮だな、仕事の合間に確認してるけどなんだか微笑ましいわ。
「部長の立場になって永太たちをこき使いたいのに…」
「貴方よくサイコパスって言われません?」
「今日も平和っすね~」
「「どこが?」」
「ハモらないで下さいっすよ~」
なんにせよ平和なことはいいことだ。この平和がずっと続けばいいな…なんて。…にしてもさっきからけいちゃんずっと黙ってるな、どうしたんだろ。
「…高瀬奈さん、全然仕事進めてなくないか…」
けいちゃんが小声で言う。先輩…喋ってばかりで仕事進めてなかったのか。ダメじゃん…。
せっかく休み貰ったのにやることねぇなぁ。永太は仕事だし…。暇だ、することがねぇ。うーん…取り敢えず外出てみるか?天気もいいし。
俺が外に出ると、太陽の光が俺を包み込んだ。家の鍵を閉め、何となく歩き出してみる。うーん…行く宛てもないんだよなぁ。本屋にでも行ってみようかな、少し遠くの。あ、ショッピングモールの中にあったよな?そこ行ってみるか、車で行こうっと。
ふぅ、到着。本屋って言っても解体本もないんだよなぁ…。学生の頃はよく漫画とか集めてたけど殆ど捨てちゃったし。…まぁなんか良さそうなのあったら買おうかな。
暫くショッピングモール内を歩いていると、目的の本屋が見えてきた。あんま来たこと無かったけどこんな感じなんだな。何か静かだな…本屋なんだから当たり前か。
へぇ、漫画から小説まで色んな種類があるんだな…。絵本とかの子供向けのやつもある。…ん、何だこれ。
俺が手に取ったのは、『伝える想い』という小説だった。表紙の虎獣人と狼獣人が部長と蒼哉に似ていたからつい手に取ってしまった。…へぇ、この二人が恋に落ちる話ね…。…って、これBL小説やんけ。やば、誰にも見られてないよね…?俺が腐男子みたいじゃん…。いや、まぁ、ゲイなのはそうなんだけど…うん。
この時の俺は心にも思っていなかった。まさかあの人に見られていたなんて…。
「…杉皚くん?」
「えっ…」
そこに居たのは…。見覚えのあるロングヘアの猫獣人。俺はこの人名前を知っている。…俺や永太の同僚、
「あ、やっぱり杉皚くんだった」
「…あぁ」
「何読んでるの、小説?」
「あ、こ、これはっ」
華成さんが手を伸ばし、俺の手から本を取る。ちょ、まずい、見られたら…。
「へぇ、BL小説じゃん。私昔読んでたなー」
「…え」
「私、学生時代腐女子だったから」
笑いながら華成さんが言う。…なんか情報の処理が追いつかないわ。会社以外の場所で同僚と会っていきなり元腐女子って暴露されて…。
「杉皚くんそういう趣味あったの?」
「な、ばか、んなわけ」
「反応でバレバレだよ?」
「いや…趣味、というか…」
「えーまさか男好きなの?」
「……」
「あ、当たりっぽいね」
…バレた。まぁ…好きな人バレてないだけマシか…。永太、こういう時どうすればいいんだ。俺人と話すの無理だぞ…。クソ、今になってあの親がより憎たらしく感じる。
「んーてことは私は恋愛対象じゃないのか…」
「…それってどういう」
「…私が杉皚くんを好きになってたって意味」
「…は?」
あとがき
宵明華成のプロフィール
名前:
性別:雌
種族:猫
年齢:24
身長:159cm
体重:内緒
誕生日:4月13日
性格:おだやか
筆者による紹介:永太や幸牙、蒼哉達の同僚です。毛の色はシルバーと白。幸牙と同じような色です。幸牙のことが好きで、実はずっと目で追っていたようです。幸牙がホモだって知っても華成は幸牙のことが好きみたいです。
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