第10話 お前の全てを知りたい(前編)
「思い出の…傷?」
「そ、思い出の傷」
思い出の傷…一体蒼哉に何があったと言うのだ。この傷は何が原因で出来たんだ?
「な、何で傷が出来ちゃったの?」
「あー…うん、まぁ…」
珍しく蒼哉が言葉を濁した。いつも率直に物事を言う蒼哉がそこまで濁す意味は何故だろ
うか。
「あ、嫌なら話さなくても…」
「い、いや、話すよ。でも、けいちゃんがこの話を聞いてショックを受けないか…そこが
心配なんだよね」
俺が話を聞くとショックを受ける…?余程酷いことがあったのだろうか。でも俺宛てに?でも俺は…。
「俺は…話を聞けない事の方がショックだな」
「…え?」
「俺はお前の事をもっと知りたい。もう1回、お前の全てを知りたい。だから、なんでも話
して欲しい。その傷の話…聞かせてくれないか?」
俺は真剣な眼差しで蒼哉を見る。
「…そこまで言われちゃ話すしかないじゃん…」
苦笑いしながら蒼哉が言う。
「この傷はね、交通事故で負った傷なの」
「えっ、事故!?」
俺は驚いた。まさか事故によって負った傷だとは思いもしなかったからだ。
「うん、事故。でもそれはね、けいちゃんを守ろうとしたからなんだ。」
「俺を…守ろうとした?」
「そう。あの日、けいちゃんは複数人の子達にいじめられてたの。そしたら、そいつらが
けいちゃんを車道に突き飛ばしたんだ」
「…それで、車に轢かれそうになっていた俺を助けようと…」
「うん、けいちゃん目掛けて一目散に走って、けいちゃんを思いっきり突き飛ばしたんだ。で、代わりに俺が轢かれちゃったの」
その傷は、俺を助けようと出来た傷。その傷は、蒼哉にとって、俺を救ったと言う名誉の傷であり思い出の傷。蒼哉にとっては、色々な思いが詰まった傷なのだろう。
「そう…だったんだ。ありがとう。俺を助けようとしてくれたなんて…」
「お礼なんていいよ。俺はけいちゃんが生きてて本当に良かったよ」
蒼哉には、感謝しきれないな…。
「そういえば、けいちゃんが記憶を失っている理由、俺知ってるよ」
…え?
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