第191話嫌悪

「いやいや、私達の要望と違うものが出されるとは…歓迎されてなかったようですかな?」


シン国の陛下は料理を眺めて残念そうにしていると…


「はい、私も楽しみにしていたのでとても残念です…もっと友好的な関係を築けるのではと思っていただけに…」


王子も形のいい眉を下げて軽くため息をついた。


「私達はリバー国を信頼してこうして交渉に来たわけですが…この会食はどう捉えればよいのやら…」


じっとオバジ陛下を見つめた。


「我々は精一杯のおもてなしをするつもりでしたが、たまたま食の違いが出てしまったようですね…」


陛下は顔色を変えずに淡々と言うが二人の間にはピリついた雰囲気が流れていた。


するとそこにはファイ王子が慌てて駆けつけると声をあげた。


「すみません!これは私の認識の違いからこのようになってしまったのです!申し訳ないのですが改めて明日また料理を食べて頂きたい」


「何度でも同じでは?やはり魚を使った料理はそちらでは難しいようですから…」


「いえ!大丈夫です」


ファイ王子は自信満々に答えた。


「もし…その料理が我らにとって納得できないものであったら…」


どうしますか?と顔色を伺ってくる。


「それはないと思いますが、その時はそれなりの責任を取りますので」


「ファイ様!」


ロードが声をあげてやめさせようと止めるがファイはそれを手で制止した。


大丈夫だと笑ってみせると


「では明日の料理を楽しみにしています、今後の国の協定の話し合いはその後でよろしいですか?」


シン国の陛下がオバジ陛下を見つめると


「そうですな、こんな雰囲気ではまともな話し合いもできませんからな…」


「では我々はこれで失礼致します…」


「部屋をご用意させますので今夜はゆっくりと旅の疲れをお取りください」


オバジ陛下が兵士達に案内させようとすると…


「それには及びません。我らは海の上が慣れてますので…来た船に滞在しておりますのでお気になさらずに…」


「……わかりました、ではお見送りだけさせていただきます」


オバジ陛下はシン国の陛下達を護衛して送るようにと兵士達に指示を出した。


しかし兵士達はシン国の態度に納得出来ずに躊躇する。


「何をしている?早くお客様をお連れしなさい…」


オバジ陛下の強い口調に仕方なくシン国の陛下達を先導した。



部屋に残っていた近衛兵達がシン国の人が居なくなると声を荒らげた!


「陛下!なんですかあの態度は!シン国は我らを馬鹿にしています!」


「そうです!何に対しても文句を言って…何しに来たんだあの国は!!」


不平不満が爆発して怒りを覚えていた。


「落ち着きなさい…」


陛下の静かな声に部屋はシーンとなった。


「しかし…陛下…あのシン国の対応は…この交渉を持ちかけて来たのもあちらですよ?」


「話ではかなり友好的だったと聞いていたが…どうも色々と情報と違うようだ…少しシン国について深く調べた方が良さそうだ」

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