第112話乾杯
店のテーブルが全て埋まるとクロードはミラ達が座るテーブル近くの中央に立つ。
今日はプレオープンなのでゴールドクラスの部屋は使用せずにシルバークラスとブロンズクラスのテーブルを使っての接客だった。
「本日は新しくオープン致しました私達の店に来ていただき誠に感謝致します。硬っ苦しい挨拶は抜きにして…今日は料理を楽しんで下さい!何か聞きたいことなどありました近くの給仕にお声かけお願い致します…それでは…『ミラージュ』に乾杯!!」
『乾杯!』
皆がグラスをあげる中ミラは一人イーサンを見上げる。
「ミラージュ?お店の名前?」
ミラの驚く顔にイーサンはしてやったりとニヤリと笑う。
「ああ、素敵な名前だね。蜃気楼のようにここにあるようでない…はかない夢のような一晩を…って感じかな」
「私の…名前も入ってる」
「ミラの店だからね。さぁ料理が来るよ、パッドが気合い入れてたからね…料理が決まってからは味見もしてないしどんな風になってるのか楽しみだ」
イーサンがミラに笑いかけると
「ありがとうございます…」
ミラは消え入るような声でお礼を言った。
「いいんだよ。ミラは好きなように生きればいい、メアリー様が出来なかった事を好きなように好きなだけしていいんだ。それの為に私達を好きなように使って構わないんだよ」
イーサンはミラの頭を優しく撫でると
「私のわがままを知って付き合ってくれるんですか?」
「もちろん、その為にここまで来たのだから」
イーサンが頷くと
「だからそんな申し訳なさそうな顔はしなくていいんだよ…それにほらみんなを見てご覧」
イーサンは忙しそうに動く給仕達や楽しそうに客と話すクロードを指さす。
「彼らがいやいややってるように見える?」
ミラは忙しそうしながらも顔を輝かせているみんなを見ると
「ミラのしている事はミラにとっては願いの為のわがままって思ってるかもしれないが彼らにとっては救いになってるんだよ」
「そっか…なら…よかった」
ミラはずっとここに来ていた時から張っていた肩の力がスっと降りる気がした。
「さぁ、彼らの晴れ舞台だ。私達はそれを楽しもう」
「うん!」
二人が笑っていると
「お待たせしました。本日の前菜のトマトのカルパッチョです」
ちょうど給仕が二人に料理を運んできた。
イーサン様の前にスっとお皿を置くと移動してミラの前にも置く…すると給仕の一人が耳元でそっと囁いた。
「パッドさんからの伝言です。楽しみやがれ…だそうですよ」
ミラは驚いて給仕さんを見つめると
「僕らも同じ気持ちです。ここまできたミラ様には一番に楽しんでもらいたいです」
ニコッと笑いかけると次の料理を取りに行くため厨房へと戻っていった。
「んー!美味しい!さっぱりして上にかかってるドレッシングを少し変えたみたいだな…」
イーサン様は早速食べ始めていた。
周りを見ると他の人達も美味し顔で料理を堪能している。
よかった…この店作ってよかったんだ…
ミラは目の前に輝く赤い宝石のような料理を嬉しそに頬張った。
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