第70話これから
｢あなた方の気持ちはわかりました…ですがミラちゃんの気持ちもありますからね｣
ケイジの言葉にジョンの顔が曇る。
｢それは…もうミラにはこの話をしたって事か？｣
｢いえ…母親の事などは言ってません。この子が何処まで知っているのか分かりませんから…ただここから出してあげることは出来るとお伝えはしました｣
｢ミラの反応は！？｣
ジョンが聞くと
｢悩んでいるようでした、なので一週間後にもう一度聞くと言ってあります。その時にここに残るか外に出るか返事が欲しいと…｣
｢一週間…｣
あまりに短い期間にジョンは実感がわかない…一週間たったらこの温もりを感じることが出来なくなると言うことに…
｢なぁ看守長…頼みがあるんだが…｣
ジョンはミラを抱きしめて看守長を見つめた…
ミラは目が覚めるといつものジョンの部屋ではなく…ケイジ看守長の部屋にいた。
｢あれ？ジョンさんにローガンさんは？｣
キョロキョロと不安そうに部屋を見つめると
｢おや、起きましたか？｣
ケイジ看守長が声をかけてきた。
｢看守長…ジョンさんは？｣
伺うように聞くと
｢彼らは一度帰しました。看守達が戻って来たら大変ですからね。それとミラちゃんは一週間は私の部屋で過ごして貰うことになります｣
｢えっ…｣
ミラは不安で思わず声を漏らすと
｢おや、その反応は傷つきますね…ジョンさんやローガンさんと比べられたら確かに日は浅いですが…｣
ケイジ看守長が悲しそうな顔を見せると
｢す、すみません…やっぱり寂しくて…｣
ごめんなさいと頭を下げると
笑いながら頭を撫でられる。
｢ふふふ、すみません。少し意地悪でしたね｣
ミラが上を向いてケイジを見つめると
｢あなたをここに置くためには私の子供…では不味いので屋敷のメイドの子供と言うことにします。料理が得意でしばらくここの手伝いとして呼んだと…ですから私の事はケイジ様と呼んで下さい｣
｢ケイジ…様｣
呼んで見るとケイジ看守長が眉を下げる。
｢よく出来ました。本当はケイジおじさんと呼んで欲しいですが仕方ありません。ミラちゃんにはこれから食堂のご飯を作るのを手伝って貰います。これから看守達にも話しかけられる機会が増えると思いますが…ミラちゃんなら上手く対応できるでしょう｣
｢うん…頑張る。ケイジ…おじさんありがとう｣
呼んで欲しいと言われたらそう呼んでお礼を言う。
｢ミラちゃん…二人の時は是非そう呼んで下さいね｣
嬉しそうに笑った。
｢それと囚人達とも話す事に問題はありません。ミラちゃんの可愛さなら…大丈夫でしょう｣
ミラは首を傾げる…可愛いと話して問題無いとはどういうことだ？
｢まぁそれは明日にでもわかるでしょう。では早速看守達に説明に行きますが…覚悟はいいですか？もしこれが看守達に全て嘘だとバレれば私はもちろんミラさんもここに囚人として入る事になるかも知れません｣
｢えっ…｣
ミラは驚いてケイジ看守長を見つめる。
｢不安ですか？それならすぐにでもやめてここから出てもいいですよ｣
ケイジが聞くと、ミラは勢いよく首を振る。
｢私は大丈夫、ここに入っても…でもケイジおじさんはなんでそこまでしてくれるの？私のせいで罪を犯すことないのに…｣
｢……それは…まぁ気になさらずに、私ミラちゃんにお会いして大ファンになってしまいましたので…｣
ニコリと笑うがミラの笑顔は晴れない。
｢ありがとうございます…私の為に…でもケイジおじさんを犯罪者にさせる訳にはいきません。もしバレたら全部私が罪を背負いますので心配しないでください｣
力強くミラは頷く。
ケイジは驚き目を見開くと…
｢本当にファンになってしまいました…｣
ボソッとつぶやき、ミラに微笑んだ。
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