第26話目覚め

ミラはふと目を覚ます…あたりを見るが暗い…周りが静かな様子からまだ夜なのだろう。


寝すぎたようでバッチリと目が覚めてしまった…


ー喉が乾いた…


ゴクッと唾を飲み込もうとするがカラカラで全然満たされない。


誰かを呼ぼうにもやはり声が出なかった、かろうじて動く頭を動かしていると…


パタパタ…羽音が聞こえたと思うと顔にフワッと何かが当たった。


近すぎて何か確認が出来ずにいると…


スリスリ…頬に身に覚えのある感触がある!


ーノア?


ノアは私の心の声が聞こえたのかコクコクと頷いている…


ーノア…喉が乾いて…誰か…


呼んで欲しいと頼もうとするが…無理だよな。諦めようとするとノアが何処かに飛んで行ってしまった。


ミラはどうにか動けないかと体を左右に揺らしていると…


「ミラ?」


ハーパーがそうっと近づいてきた!


ーノア!ハーパーを呼んできてくれたんだ!


ミラはハーパーに視線を送るとパクパクと口を動かす。


「喉が乾いたんだね!ちょっと待って今メイソンを起こすから!」


ハーパーが消えるとガチャン!と何かが壊れるおとがする…すると慌てた様子でメイソンが現れた。


「ミラ、起きたのか…」


小声でそっと近くに来ると


「ほら、水だ」


メイソンが少しずつ水を流し込んでくれる。


ミラはコクコクと飲み込んとふーと息を吐いた…


「しかしハーパー…なぜお前ここに?よく来れたな」


メイソンが聞くと


「ノアが呼びに来たんだ…鍵になってもらって抜け出して来た…だからもう戻らないと」


ハーパーは危ない橋を渡ってまで私のところに駆けつけてくれたみたいだ…


お礼を込めてありがとうと口を動かすと


「早く良くなれよ」


ハーパーは安心したように笑うと牢屋を出ていった…


その日からみんなに助けてもらい、少し体が動くようになり声も出るようになってきた…


「みんな…ありがと…」


仕事の合間をぬって代わる代わる自分の世話をしてくれるみんなには感謝しかない。


「ミラが起きてよかった…」


お礼を言うとみんなはそれ以上に笑顔を返してくれる…しかしそれがミラは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


ー今の私は確かにミラだ…みんなと過ごした記憶もある…たけど同時に違う記憶も持っていた。


それって前の私って言えるのかな…


みんなが心配してくれるミラではない気がして…ミラは目覚めた日から日に日に弱っていった…

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