第3話

「なぜ、お前が知っているか、分からない。


 ・・・が、知っているなら、消えてもらうだけだ」


俺の前にいるヤツは、魔法を詠唱しはじめた。



こんな距離が近かったら、普通魔法は使わない。


なぜなら、詠唱中に近接攻撃を受けやすいからだ。


コイツは俺のことを雑魚だと思っているのだろう。



まぁ、そう思うのもしょうがない。


無名の俺なんか、警戒するに値しないと思うのが普通だ。



「消えろ」


そう言うと、ヤツの手が光り輝く。



あれは攻撃魔法が発動する前兆だ。


食らうとマズいので、俺は唱える。



「魔法解除っ!!」



「っ!?」


ヤツの手の光は無くなった。



「なぜ、貴様がそんな高等魔法を・・・」



「まぁ、いろいろあってだな・・・。


 ともかく、今なら見逃してやる」



「・・・ふざけるなぁ!!!」ダンッ


自分に肉体強化魔法を掛けて、俺に飛びかかってくる。



「しょうがないな・・・」


「なっ・・・」


俺が無詠唱魔法を使うと、男は白目になり倒れた。




「さてと・・・」


倒れた男に魔法を使う。


使ったのは、記憶を改変をする魔法「マインド」だ。



今あったことを忘れさせる。


そして、これをやるかどうか迷ったが、することにした。


男のこれまでの記憶を消し、自分はただの日雇い労働者だと思い込ませた。



男はどうせ、これに飽き足らず、テロリズムに走るだけだ。


そう思い、俺は男から、これまでの記憶を奪い去る。



この男は本来、魔物を召喚して暴走させるはずだった。


それで近隣にあった俺の村は滅ぶのだが・・・



なんとか、それを防ぐことができた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あれ、俺は何してたんだっけ・・・?」


男は、建設現場でそう言う。



俺はあの後、テレポートでこの男をここまで連れてきた。



「おい、何ボサッとしているんだ、手伝え!!」


「はっ、はい!!」


男は建設現場の指導係に、仕事をさせられる。


それをすんなり彼は受け入れた。



(まぁ、もし不都合がでてきたら、後々なんとかしよう)


俺はその光景を見て、この場から去る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日


「よっと・・・」


俺はいつも通り、農作業をする。



(本来なら、この村は今頃、灰になっていたんだよな・・・)


そう思うと、なんだか胸がドキドキする。



主人公の覚醒イベントを潰しちゃったわけだし、これから物語は大きく変わる。



(せめて、主人公のエリーが、攻略対象と結ばれるまでは俺が手伝わないと・・・)


物語の流れを変えてしまった責任を取ろうと俺はしていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あっ!!」


「おぉ!!」


納税のため、俺は都に来ていた。


そこでバッタり、主人公エリーと俺は出会う。



「調子はどうだ?」


「うん・・・」



(あれっ・・・


 あんまり彼女の返事が良くないな。


 確か王子とひょんなことがあって、出会うはずなのに・・・)



「なんか楽しいこととかあったんじゃないの?」


俺はそれとなく彼女に聞いてみる。



「全然そんなことない!!


 私は村を離れて、とても寂しいわ・・・」


彼女がシュンとする。



「そっ、そうか・・・。


 じゃあ、なんか旨いものでも食うか!!」


俺は彼女を慰めようと、飯を食いに行くことを提案する。



「食べに行くっていっても、そんなお金あるの・・・?」


「あっ・・・」


ゲームの知識を生かして、俺は金を持っているんだが、普通の村人はそんなお金を持っていない。


ここで、彼女にご馳走するのは、不自然だよな・・・。


そう思った俺は



「わりぃ、言ってみただけ」


「そうだよね。


 ごめん、私がしんみりした雰囲気を出しちゃったせいで」



俺達は代わりに、この辺を一緒にブラブラすることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る