YouTuber・オーディション・黒歴史

「こりゃ。予想以上じゃないか。よっぽどつとむさんにしごかれたみたいだな」


 永遠とわさんに褒められたことがちょっとだけくすぐったい。めったに無いことだからか。でも、それが物語を倒すためのものだと考えると複雑な気持ちになる。


 いつか黒歴史と思う日がくるのかもしれない。でも必要なことだと自分に言い聞かせる。


「じゃあ、行ってくる」


 永遠さんが回転した扉を入っていくのを全員で見送った。


「私達なんのために呼ばれたんだっけ?こんな状態ならこなくてもよかったんじゃない?余裕そうじゃん」


 かえでさんの言うことも最もな気もするがこの前の組長との戦いを思い出せば震えは止まらない。不意打ちをするとはいえ、あの組長と対峙していると思うと不安にもなる。


「いえ。油断はできません。特に四天王って言うのが特に強くて……」

「あー。お嬢ちゃんたちうちになんかようかい?」


 急におじさんの声がして背筋がゾワッとする。近づかれているのに気が付きもしなかった。こちらにも4人もいるのにも関わらずだ。


「あなたは……?」


 どうやらひとりきりであることだけが幸いだが、油断はできない。


「その四天王の侍っ呼ばれているやつだよ」


 四天王?組長よりも強いと言われていたあの……?


「あーっ!見たことあるとおもったらYouTuberのひとだーっ」


 楓さんが大声で叫ぶ。


「この前、十人に囲まれた状態からの鬼ごっことか面白かった」

「おーっ。俺のファンのなのか。そりゃ歓迎するぜ。お嬢ちゃんたちかわいいし、むさ苦しいところだけどゆっくりしていくといいさ」


 楓さんの言葉にも驚くが、侍と名乗った四天王の言葉にも驚くしかない。


 悠長にしてくれている間に逃げたほうがいいのか。それとも一緒についていって永遠さんの手伝いをしたほうがいいのか。


「よかったらオーディションもしようか?チャンネル出してあげられるかもよ?」


 調子いいことを言っているのはこちらを油断させるためなのだろうか。

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