憧れの・猫の・におわせ
「なんだか大変なことに巻き込まれてるんだね」
意外なことに
「それにしてもルナ・ファンタジーワールドとは。ずいぶんと大物を相手にしているな。こちらの想定の範囲ぎりぎりを攻めているよ」
「そんなに有名なんですか。あのテーマパーク」
確かに大きいなとは思っているし、あれだけの物語たちをこの世に顕現させ続けているわけなのだから、有名でないわけはないのだけれど。勉さんの表情は見たこともないくらい険しく、頭に手を置いたまま固まってしまっているのを見ると不安もなる。いつも自信満々というか永遠さんと違って、何が起きても知ってましたと言わんばかりの冷静さを持っていたからだ。
「有名だよ。憧れの存在と言ってもいい。あれだけの力を振るいながら世界に許されている存在はそう多くはない。この書店もいずれはあのレベルまで到達したいと思っているんだよ。佑の知り合いに何人か声を掛けて置くよ。氷姫も疲れただろう。少し休んでいるといい」
優しくしてくれるそれに少しだけ違和感を覚える。勉さんのことだ、手伝えと言われると思っていた。というかそのつもりだったのだ。
「手伝わなくてもいいんですか?猫の手でも借りたい状況だと思うんですけど」
「そうなんだがな。ここまで無事に返ってきてくれただけでも十分仕事を果たしているし、ここから先、氷姫の力が必要になる場面もありそうなんだ。だから、今はゆっくり休め」
何をにおわせているのか、不思議なことを言う勉さんは珍しくもないが、氷姫には見当もつかなくて首をかしげる。
「今はわからなくてもいい。でも必ず氷姫の力が必要になるんだ。必ずね。それにただ休むだけじゃない。習得してもらいたい技術もある。そのためにも今だけはゆっくり休め」
そんなに言われたら素直にうなずくことしか氷姫はできなかった。
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