ちょんまげ・ロボット・でござる

「相変わらずすごい作り込みですね」


 この遊園地自体を語り部が作っていると言ってもおかしくないくらいにこのお化け屋敷はリアリティを突き詰めていた。どうやって、幽霊たちを表現しているのかわからない。


 足元を何かが通り過ぎたり、突き当りの壁を何かがすり抜けていったり、話し声がどこからともなく聞こえたりと、信じられないことばかりが立て続けに起きる。ロボットを使っていると説明書きにはあったけれど。それだけだと到底信じられないことも多い。


 目の前にいるちょんまげ姿の侍さんもそうだ。コスプレにしてはよくできているし、どことなく存在感が薄い。どうやってこれを再現しているのか気になって仕方がない。ホログラムかなにかなのだろうか。それにしては存在感があるのだ。それこそ本物の幽霊みたいなものが。


「な、なぁ。ひ、氷姫ひめ。さっさと先にこうぜ。そんなちょんまげほっといてよぉ」


 相変わらず永遠とわさんはびくびくと言うかおどおどと言うか、視線も定まらないし挙動不審だ。


「はーい」


 仕方がないから興味をよそにして、先に進むことを優先する。せっかく調べられるチャンスだったのにと思わないでもないがこの先に大事な情報があるのだ。先を急ぐのは当然なことではある。


『この先気をつけでござるよ』


 足を先に向けてあるき始めた時、かすかな声で何かが聞こえた気がした。


「えっ」

「ひ、氷姫。頼むよ。咲き進んでくれ」


 きっと気のせいだ、そう自分に言い聞かせて先を急いだ。

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