一年生・玉の輿・チョコレート

「おっすー!チョコレート買ってきたよー」


 高らかにお土産のチョコレートが入った袋を掲げながら永遠とわさんが黄昏書店に入ってきた。いつものことながらお客さんがいないからいいのだけれど。永遠さんのその感じはどうなのかと氷姫ひめは感じてしまう。


 気にしたところでだれもいないのだから、気にするだけ無駄なのだけれど。


「割と久しぶりだね永遠。なにかわかったりしたのかい?」


 もしかしてつとむさん焦っている?珍しい気がするけど、その気持ちはよく分かる。たすくさんと隆司りゅうじくんがいなくなってからもう随分と経つ。それこそ、この時代に馴染んでしまうくらいには。


 生きているとしたら誰かに囚われていて、自由の身になれないのか、あるいはもうすでに……。


「どったの氷姫。玉の輿に乗る夢でも想像してたの?」


 ぼーっとし過ぎたのか永遠さんが妙な勘繰りをしてくる。玉の輿ってそんなの考えたこともなかった。玉の輿とは違うけど佑さんと……。


「おーい。氷姫。こっち無視してさらに妄想進めないでくれよー。中学一年生にはまだ早かったかぁ?」

「ほら。あんまり氷姫をいじめない。なにか成果があるからわざわざ来たんだろ。さっさと用件に入ったらどうだ」


 勉さんの期限が少し悪気がするのは気のせいだろか。いや、あれからというもの勉さんはあんまり笑わなくなった。それは間違いない。


「ああ。わかったよ。とりあえずチョコレート食べながらな。期待しすぎるなよ。これまでなにも情報がなかったんだ」


 そう言われたって期待せざるを得ない。

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