青春・SNS・遊園地

「なに?幽霊騒ぎ?知らないよそんなの。兄ちゃん若いね。青春だね。俺にもちょっとは分けてほしいよ。その若さ」


 大道具だと名乗ったおじさんは、しょっぱなからそんな感じだったから、話を聞く必要はないような気がしてしまった。


「おっ。だけどよ。日によってだけど舞台装置に足跡がついてることがよくあるんだ。だれかのイタズラか、脱いだ靴をそのあたりのほっぽってるやつがいるのかと思ったんだが、その幽霊騒ぎと関係でもあるのかね」


 諦めて、違う人のところへでも聞きに行こうかと考えていたときの発言で、気が変わる。


「足跡?舞台上にってことですか?」

「おうよ。舞台上だったり、その昇降装置だったり。誰かが土足で何かをしてるとしか思えなかったんだけどよ。最近はなにかと騒ぐと、うるさい親父やつかいされてすぐにSNSに書かれちまう。それを見て凹むのが嫌になったから、最近じゃ大人しく掃除して終わりにしていたんだが。深夜にそんな噂があるんじゃ、ほっとけはおけないな」


 やたらと張り切り始めたおじさんをこちらで解決しますからと、なだめる。


「そうだよな。兄ちゃんが依頼受けたんだもんな。俺は娘を遊園地に連れて行ってやらないとならんし。確かに兄ちゃんに任せたほうが良さそうだ。余計なこと言ってすまなかったよ」


 そうにかっと笑うおじさんは年齢より若く見えた。


「しかしあれだな。足跡があるってことは幽霊じゃないってことだな」


 確かにとたすくは納得する。


 幽霊に足ってないもんな。

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