モテ期・それでも僕は・下積み時代
「そんな剣筋でどうにか出来るとでも?」
どうしようもない。そんな感情がこみ上げてくる。どうにかできるだなんて思えてはいない。
あらゆる物語の力を試す。魔法に、奇襲に、剣に、ビームに。あらゆる方法を試すたびに、彼は驚いては軽くそれを簡単にさばく。
そのたびに、佑は心が折れる音が聞こえていた。 それでもしなくてはならない使命感だけが佑の体を動かし続けた。
「日本では下積み時代とでも言うのか。その中で培ったものを表現するのが得意だよね。でもそれは所詮、それだけに過ぎない。個人が保有する才能はそれらを軽く凌駕する。それを見極めて伸ばす。それができていない以上、君が勝てる見込みはない」
モテ期というやつを経験したことがない。厳密に言えば経験はしているのかも知れない。仮にも物語の登場人物だったのだ。それくらい許されていたのだろう。その記憶はないものの、知識としては理解している。
その与えられた機会がすべて想定どおりだったとして。そのモテ期が作られたものだったとして。だからといって何もしなかったらそれが成立するのだろうか。登場人物が諦めていたら成立するのだろうか。
「勝てないからって諦めてたら物語なんか成立しないんだよ」
おそらくだろうけど、登場人物が最初から諦めていたらやっぱりモテ期はもモテ期じゃないのだ。
「敗北を知ることも物語として大事な要素だとは思わないのか」
思う。激しく同意する。でも、それがここだとは決まっていない。それに敗北を知らない物語だっていくらでもあるはずだ。
だから。
「それでも僕はって言い続ける!」
きっとそれが物語だから。
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