好き嫌い・別腹・の終わり
「
目の前で人が傷つくのを、それを防げなかったことに戸惑いが、恐怖が、不安が心の奥底から噴き上げてくるのがわかる。それくらいには目の前の光景は受け入れられないものだし、好き嫌い関係なく、知り合いが死にかけている姿なんて到底受け入れられないのだと悟る。
きっとこれも認知をずらしているだけだと、信じたいのだけれど、血を吐き出している永遠の姿はとてもじゃないけど、力を使えているとは思えない。
「うっさいな。これくらい覚悟の上だろうって。わかんだろうがよ。まだ、血が出てくるくらいには生きてるってことだろうよ。死ぬならこのまま消えちまうが」
「おっと、一撃で終わってしまいましたか。ちょっとは期待したのですがやっぱり間抜けは間抜けでしたね」
男のバカにしたような口調に腹立たしくなってくる。
「おいまてよ。俺の番を通るんじゃない。やつの領域はもう解けんたんだあとはぶん殴るだけだろ」
口元に垂れている血を拭うと永遠は激しく動き始める。
「なっ。ま、まだそんな動きが」
その動きはなにかの終わりを告げるかのようで、その勢いのまま男に拳を突き立てた。
「ちょっとした油断はお互い様だったな。でもこれで俺の勝ちだ」
永遠の拳は顔面が歪んでしまうのではないのかと思うほどの衝撃を与えている。男は吹き飛び、永遠はその場に崩れ落ちた。
「永遠!」
呆然と見ているだけだった
「
そう呼びした喜美子はすぐさま、自らの手のひらを永遠の大きく空いた腹に当てる。その手が光り始めたかと思ったら傷口はふさがっていく。
「なんだよ。そんな力を隠し持ってたのかよ」
「これも
そうだったのかとようやく納得する。どおりでなにも手伝ってくれなかったわけだ。もしかしたら、合間合間で回復する効果のある力を使っていてくれたのかもしれない。
「あー。腹減ってきた。勉さんのオムライスまた食べてー」
「何言ってんのよ。針を腹に食らっておいて」
「それは別腹だろ。針なんて腹も膨れないよ」
ホッとしたのかふたりとも口数が多かった。
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