反省会・寄生虫・カラフル

「とりあえずは反省会ね。そもそもこんなに大事にする必要はなかってところからかしら」


 アイドルグループのひとりが発した言葉でその場に居た全員の表情がピクリと反応する。


「おい。それってどういう意味だよ」

「聞き捨てならないわね」


 売れ残りの若手俳優だけでなく夏希なつきまでもが反応して、険悪な空気が流れる。


「ちょっとまってくださいよ。変身した偽物が化けてたのってグループのひとりなんですよね。だったらその人本人はどうしているっていうんです?」


 たすくはたまらず割って入った。このままだと事態は悪化すると思ったからだ。でも、それはすぐさま否定される。


「今、点呼を取ったのだけれど全員揃っていの。人数が多いことを利用して紛れていたみたい。どうやら認識を歪ませる力も持ってたみたい」


 そういうことならひと安心。


「認識を歪められる?それって」


 いち早くなにかに気がついた夏希が倒れていたはずの男に視線を移すが、そこにはもう誰もいない。


「嘘だろ。さっきのあれは歪んだ認識だっていうのかよ。おい。だれか行方を知らないのか?」


 全員が一斉に首を横にふる。


「そんなカラフルな衣装してるから目が散って逃げられるんだよ。人のせいにする反省会なんて開いてる場合じゃないだろ」


 悪態をつくならこの若手俳優の右に出るものはいないんじゃないかと思うくらい話すたびに悪態をつき続ける。


「認知を歪ませられるなら、逃げるなんて得意分野でしょう。お互いを攻めてる場合じゃない」


 正論を言えばにらまれるのもわかっているのだけれど、言わなくては犯人はこのまま逃げてしまうしのがすわけにはいないので仕方がない。


「ちっ。夏希に寄生虫みたいにひっつきやがってよ。なんなんだよお前」


 そう言えば名乗りすらしていなかったことを思い出す。


九重佑ここのえたすくって言います。夏希さんの手伝いをしてるだけですよ」

「真面目かよ。そんなことしてる場合じゃないんだろ。追いかけろよ」


 そう言い捨てると若手俳優はどこかへ行ってしまった。

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