―02― 初めての狩り

「冷静に考えたら、こうして家を追い出されたのは正解だったかもしれないな」


 俺はこの世界を『ゲーム』と同じように攻略しようと考えていた。

 そう考えたとき、貴族としての役目がどうしても邪魔をする。だから、こうして追い出されたのも今思えば悪くなかったかもしれない。


「では、早速ではあるが、アレを用意しよう」


 アレとはなにか? 〈呪いの腕輪〉のことだ。

『縛りプレイ』をするのに、必須となるアイテムだ。

 ちなみに――。


「〈呪いの腕輪〉の素材である〈呪われた鉱石〉はすでに調達済みなんだよなー」


 ステータスが手に入ったら、すぐに〈呪いの腕輪〉が作れるように、あらかじめ〈呪われた鉱石〉を調達していた。

〈呪われた鉱石〉はアンデッド系のモンスターが生息する洞窟で手に入るらしいが、今の状態では、まだ攻略するのは難しい。

 だから、あらかじめ手に入れておいてよかった。

 それにしても、『ゲーム』をしていなければ、〈呪いの腕輪〉の存在すら知ることはなかったんだよな。

 本来、〈錬金術師〉というジョブは、どんな素材でなにができるのか手探りで探す必要がある。

 だけど、『ゲーム』では、ある程度、どんな素材でどんなアイテムが作れるのか、教えてくれた。

『ゲーム』でこの世界について事前に知識をつけておいてよかったな、と今更ながら思う。


「10個もあれば一つは成功するはずだ」


〈加工〉のスキルを使えば、必ず成功するわけではない。そして、LV1の段階では失敗する確立のほうが高い。

 だから、失敗することを前提に〈呪われた鉱石〉を10個も用意しておいたのだ。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈加工〉に成功しました。

〈呪いの腕輪〉を入手しました。


 △△△△△△△△△△△△△△△


 そして、7回目の〈加工〉でついに成功を収めた。


「よしっ!」


 心の中でガッツポーズをする。

 その上で、早速〈呪いの腕輪〉を腕に身につける。

 どうだろ? レベルは1の固定されのだろうか? 元々、レベル1のため、実際に効果が発揮されているか試しようがない。

 そのうち、モンスターを倒して経験値を手に入れたときに確かめることができるだろう。


「さて、まずは、必要なスキルを手に入れるため、モンスターを倒す必要があるな」 


 俺はこの世界でも『ゲーム』のときのように、『縛りプレイ』をして遊ぶつもりだ。

 とはいえ、無謀な戦いをするつもりはない。

『縛りプレイ』というのは、如何に準備段階で有利な状況を作り出せるか、ということにかかっている。

 だから、スキルを手に入れないことには話にならない。

 そして、スキルを手に入れるには経験値を稼ぐ必要がある。


「まずは腕鳴らしのつもりで、子鬼ゴブリンを狩るか」


 子鬼ゴブリンというと、モンスターにの中で、最弱とされている。

 実を言うと、子鬼ゴブリンなら、ステータスをまだ入手していない頃から散々狩っていた。

 本来ならステータスを手に入れないと、モンスターを狩ることは禁止されているが、我慢できなかった俺は訓練もかねて、屋敷の外に出ては子鬼ゴブリンをよく狩っていたのだ。

 なので、子鬼ゴブリンを狩るのは余裕ではあるわけだが、ステータスを手にいれてまだ初日なわけだし、まずは子鬼ゴブリンで腕鳴らしをしよう。


 ステータスがなかった頃、俺がどうやって子鬼ゴブリンを狩ってきていたのか。

 それは、ある戦法をひたすら心がけていた。

 その戦法は、潜伏からの不意打ちである。

 草木の中でひたすら潜み、子鬼ゴブリンが近づいてきたら、ナイフで急所を一撃で刺すことで音もなく殺す。

 この戦法なら、比較的安全に子鬼ゴブリンを狩ることができる。

 今はレベル1でしかも、ナイフぐらいしか武器がないという、圧倒的準備不足な段階なので、俺はこの方法を用いて子鬼ゴブリンを確実に狩っていく。

 そして、30体ほど倒した段階で――。



 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 レベル上昇に伴う経験値を獲得しましたが、〈呪いの腕輪〉の影響で、レベル1に固定されました。

 SPを獲得しました。


 △△△△△△△△△△△△△△△


 というメッセージウィンドウが表示された。

 どうやら、〈呪いの腕輪〉の効果はちゃんと発揮されているらしい。

 試しに、〈呪いの腕輪〉を外してみる。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈呪いの腕輪〉が解除されました。

 経験値が反映されました。

 レベルがあがりました。


 △△△△△△△△△△△△△△△


 というメッセージウィンドウが表示された。

〈呪いの腕輪〉の装着中に獲得した経験値はなくなるわけではない。ちゃんとストックされて、外したときに、こして効果を発揮するようになっている。

 ちなみに、経験値というのは、倒したモンスターのレベルが自分より高ければ高いほど、獲得経験値は増えるわけだが、〈呪いの腕輪〉装着時は、本来のレベルではなくレベル1の冒険者が倒したと判断されるため、通常時よりももらえる経験値が倍増するわけだ。

 ちなみに、SPについても同様の計算で倍増する。

 だから、〈呪いの腕輪〉はレベル上げがはかどるといったメリットがあるわけだが、『縛りプレイ』のため、どんなモンスター相手にも〈呪いの腕輪〉を装着するつもりでいる俺にとっては、あんまり関係ない。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈ユレン・メルカデル〉


 ジョブ:錬金術師

 レベル:1→2

 H P:100→101

 M P:100→101

 攻撃力:45→46

 防御力:55→56

 魔法力:120→122


 スキル:〈加工LV1〉


 S P:1


 △△△△△△△△△△△△△△△


 一応、自分の今のステータスを確認している。

 ちゃんとレベル2になっているし、全体の数値も上昇しているな。

 その上で、〈呪いの腕輪〉を装着した。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈ユレン・メルカデル〉


 ジョブ:錬金術師

 レベル:1

 H P:100

 M P:100

 攻撃力:45

 防御力:55

 魔法力:120


 スキル:〈加工LV1〉


 S P:1


 △△△△△△△△△△△△△△△


 うん、ちゃんとレベル1のときのステータスに戻っている。

 これで〈呪いの腕輪〉の効果がちゃんと発動しているのが判明した。


 さて、SPを入手したことだし、早速、消費しよう決意する。

 すでに、入手するスキルは決まっている。


「確か、こうしてと――ー」


 口にしながら、ステータス画面を指でいじる。このページに錬金術師のジョブスキルが獲得できるページがあったはず。

 あった、これだ。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 SP1を消費して〈鑑定LV1〉を獲得しました。


 △△△△△△△△△△△△△△△


〈鑑定〉は他のジョブでも手に入らないことはないが、錬金術師だと比較的少ないSPで獲得やレベル上げができるスキルだ。

 そして、錬金術師なら必ず入手しておく必要があるスキルのうちの一つだ。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈鑑定LV1〉

 モンスターと冒険者の一部を鑑定することができます。


 △△△△△△△△△△△△


 このようにLV1の段階だと、モンスターと冒険者の一部しか鑑定できないが、レベルを上げていけば、植物やアイテムなんかも〈鑑定〉できるようになる。

 今は、モンスターの〈鑑定〉を重要視しているため、このスキルを急いでレベルあげをするつもりはない。余裕ができたら、レベルをあげていく感じでいいだろう。


 さて、これで必要最低限のスキルを手に入れることができた。

 次はどんな『縛りプレイ』をしようか。

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