8 想像よりも痛かった
京子は制服のポケットにあった五つのビー玉を床に転がした。よくある
首を
「
五つのビー玉がふわりと宙に浮かぶ。ゆっくりと同じ高さを保ちながら上昇したそれらは、目線の位置でピタリと動きを止めた後、一つずつ順番に
「速い」
銃弾のように宙を走るガラス玉はやがて弧を描いて落下し、タンと高い音を響かせる。
床を跳ねたビー玉は再び高く跳び上がり、上向きに広げた京子の
京子は五個全部を受けとめて、「こんな感じ」とアピールする。
「凄いですね。五個バラバラですか」
キーダーは衝撃波を備えた光を手から生み出すことができる。その応用で
他に能力者同士の気配を感じ取ることと、物を動かす念動力を使うことができる。
個々で強さに差はあるが、潜在能力と鍛錬次第で
「綾斗もやってみる?」
綾斗は「はい」と返事して、受け取ったビー玉を京子と同じように床へ転がした。
五個の玉に視線を滑らせて力を発動させるとビー玉は五つ同時に浮上するが、中の一つがポンと
遠くに飛んだ一つがコンと音を弾ませ、綾斗は「あぁ」と眉をしかめる。
京子は床に落ちた四つのうち三つを彼の頭上に跳ね上げた。
「止められる?」
京子の言葉に綾斗はすかさず力を加える。
重力に持っていかれそうになる三色の玉が空中に静止した。
「玉を目で追っちゃ駄目。一個の時もそう、動かす
「じゃあ」と京子は中央に走り、くるりと綾斗に向かって
「ビー玉じゃなくて、私を敵だと思って狙ってみて」
綾斗は戸惑うが、ゆっくりと視線を京子に合わせ緊張を走らせる。
「いいんですか? 遠慮なくいきますよ」
「どうぞ。そのくらい平気だから」
綾斗は言われるままに力を込めるが、一つは力の
視線は合ったままだ。
涼しい瞳。真剣な彼の瞳は少し恐い――もちろん京子は玉を避けるつもりでいたが、ふと彼に見入った次の瞬間、一つが床へ落ち、もう一つが最短距離で京子の腹に衝突した。
「うぐぅ……油断した」
想像を超える強い痛みに京子は低く
「きょ、京子さん?」
思わぬ事態に驚いて、綾斗が慌てて京子に駆け寄った。
京子は「平気」と強がる。
「すみません。俺、そんなつもりじゃ」
「私がやれって言ったんだから、謝らないで。うまくできたし、少しずつ増やしていけば五個も出来るようになるよ」
京子は無理矢理笑顔を作り、
「でも数が増えると力が分散するから、大きいものを動かす時は注意してね」
「はい、ありがとうございます」
心配そうに頭を下げる綾斗を、京子は「そんな顔しないで」と
ビー玉移動の訓練は京子も最初は苦手だった。たとえ一発でも、初回で当てられた綾斗は大分器用だと思う。
「綾斗はすごいんだね。頑張って」
「どうしたんですか、いきなり」
メガネの下の汗を手で拭い、綾斗は普段見せない
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